「グルメフェス」の“衛生対策”はどうなっている? 「食中毒騒動」乗り越え11周年を迎えたイベントの“教訓”とは

この夏も全国各地で開催が予定されているグルメフェス。楽しみな一方で食中毒の不安も…(KY / PIXTA)

ゴールデンウィークや夏休み期間中、全国各地でグルメフェスの開催が予定されている。イベントのテーマにあわせた料理とともにビールなどを飲むのが楽しみ、という人もいるだろう。

しかし、今年1月に東京・上野公園で開催された牡蠣フェスではノロウイルスによる集団食中毒が発生したほか、昨年11月に東京ビッグサイトで行われたデザインフェスタで販売されていたマフィンが「糸を引いていた」という騒動も記憶に新しい。

気温が上がってきた今、食品の鮮度管理などにも一層の注意が求められるが、各グルメフェスはどのようなルールで安全性を担保しているのだろうか。

騒動乗り越えた「肉フェス」現在の対策事情とは

たとえば今月26日から東京・お台場で開催される「肉フェス」は、2016年に鶏肉を使用したすしが原因とみられる食中毒騒動が発生したが、現在に至るまで愛されるイベントとして続き、今年で11周年を迎える。

同フェスのPR担当者は、現在に活かしている教訓として「肉フェスでは2017年以降、以前に比べより徹底した独自の衛生管理をしています。また食品衛生協会の指導・立会検査を実施し、これらの指導・検査に則った運営マニュアルを作成したうえで、商品の芯温チェックや検食の回収も行っています」と明かす。

具体的には、以下のような食中毒・衛生対策を実施しているという。

「従業員の検便、日々出勤時の検温、手指消毒の徹底はもちろんのこと、厨房(ちゅうぼう)内のマスク、帽子、手袋を必須とし、履物を履き替えて調理しています。さらに、会場内での生肉や野菜類のカットは禁止し、常温での解凍も禁止しております。

また、厨房内が非常に暑いスペースとなるため今年は希望する店舗に冷房と網戸を設置しました。

ほかにも従業員の発熱や体調不良の早期発見や、それらの兆候がある者を従事させないなど、お客さまが安心して商品を召し上がれる対策を実施しています」(同前)

今年の肉フェスのテーマは「和牛」と「世界の肉料理」で、世界9か国の料理11品目による対決企画「世界の肉料理対決」が行われるほか、スイーツやドリンクメニューも販売される。また、毎日開催されるステージイベントにはMOROHAやHY、STU48らが登場する予定だ。

万が一、食中毒の被害に遭ったら…

飲食店の営業を行うには、食品衛生法に基づく営業許可を受ける必要がある(食品衛生法55条1項、54条、同法施行令第35条1号)。また、食品衛生責任者を置くことが義務付けられている(食品衛生法51条1項1号、同法施行規則66条の2-1項)。

前述の肉フェスでも、「各店舗に食品衛生責任者を配置しており、この責任者を中心に肉フェス独自のマニュアルにのっとって衛生管理をしています。さらに、調理工程の全てを保健所に提出し、問題がないかを確認の上、その工程通りに調理しています」(PR担当者)という。

一方で、利用者が万が一、飲食店の過失や故意により食中毒の被害を受けてしまった場合には、PL法(製造物責任法)に基づき、飲食店に対し慰謝料や治療費、通院交通費といった損害賠償を請求できる。

なお、PL法は民法の不法行為責任(民法709条)の特則である。本来、不法行為責任を追及する場合には、加害者側の故意や過失を立証しなければならないが、PL法による請求の場合は、その立証が不要である。

とはいえ、何事もないことが一番であることは言うまでもない。今年の夏もフードフェスやビアガーデンにお祭りといったイベントが全国各地で予定されているが、安心して楽しめるよう、それぞれの場所で対策・管理が徹底されることを願うばかりだ。

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