「ゲームマーケット2024春」レポート!名作映画を合体させるゲームや縄文時代がテーマの本格ワーカープレイスメントなどユニークな作品がズラリ

ボードゲーマーにとっては見逃すことのできない日本最大のアナログゲームイベント「ゲームマーケット」(以下、ゲムマ)。今回開催された「ゲムマ2024春」でも、「これぞまさにアナログゲーム!」と思わず唸ってしまう王道の作品から時勢や流行を生かしたネタゲーまで、多種多様な作品が販売されていた。

■名作を合体させてお題に合った映画を爆誕させる協力型パーティーゲーム「シンソクキネマ~合体映画上映祭」

最初に紹介するのは、背景が描かれたカードとクリアカード(手前カード)を組み合わせてお題に沿った映画ポスターを作る「シンソクキネマ~合体映画上映祭」。偉人の腕と胴体を組み合わせて最強の偉人を作るボードゲーム「ソクラテスラ~キメラティック偉人バトル~」などの作品を手掛ける「Azb.Studio」の最新作だ。

ゲームは各プレイヤーがお題に沿った映画ポスターを作る「制作フェイズ」と、プレイヤー全員で映画ポスターとお題の組み合わせを当てる「鑑賞フェイズ」の2つに分けて進行する。

「制作フェイズ」では、場にある背景カードと手札の手前カードを組み合わせて、1枚の映画ポスターを完成させる。背景カードには「それでも僕は」「プラダを着た」のような前側のタイトル、手前カードには「サムライ」「ラプソディ」といった後ろ側のタイトルがそれぞれ記載されており、これらを組み合わせて映画のタイトルを作成していく。

また、カードにはなぜか見覚えがある大怪獣やそこはかとなくB級感が漂うサメなどが描かれており、それらをどう組み合わせるかでもプレイヤーの趣味嗜好がわかる仕様となっている。

「鑑賞フェイズ」では、各プレイヤーが順番に出題者となって作成した映画ポスターとお題カードを公開し、それ以外のプレイヤーはどの組み合わせが正解なのかを推理する。組み合わせを決定する際は推理側のプレイヤー同士で徹底的に話し合えるので、「“ラブロマンス”ならこのタイトルでしょ!」「この絵面は超大作でよく見かけるぞ」など、各々が抱いた印象などを交えながら議論を深めていくことが可能だ。

全員の意見が一致したら、映画ポスターとお題カードの組み合わせを発表し、答え合わせに移る。出題プレイヤーは何組が合っているかを宣言し、間違った組み合わせがあった場合は正しいものを説明する。全ての組み合わせが正しかった場合、出題プレイヤーは自分の映画ポスターの中からお気に入りの1枚を選び、「殿堂入り映画」としてお題と一緒に並べる。

この「制作フェイズ」と「鑑賞フェイズ」を2回行い、最終的に何枚の「殿堂入り映画」が完成したかで勝敗が決定する。勝利条件となる枚数はプレイ人数によって異なるが、2人のときは3枚、4名のときは6枚など、易しすぎず難しすぎない絶妙な数が設定されている。

「Azb.Studio」の作品でクリアカードを重ねるタイプのものは、スピード動物正体当てゲーム「ムジュンゴ~矛盾だらけ動物カードバトル!」以来2作目となるが、前回の反省を踏まえて改良が加えられているとのこと。組み合わせの妙を楽しめる「Azb.Studio」ならではの最新作は、映画好きにはもちろん、ネタゲー好きにもぜひプレイしてほしい一作だ。

■注いで、こぼして、自分好みのラテを作れ!アクション×正体隠匿ゲーム「LATTE MAKER」

コンポーネントのかわいらしさに目を惹かれたのが、ブース名「8oz Games」の「LATTE MAKER」だ。筆者はゲムマ前にこの作品を知った際「これは秒で売り切れる」と思い予約をしていたのだが、案の定早期入場の時点で完売となったそうだ。その人気の理由は、以下の写真を見ればおわかりいただけるかと思う。

写真映え間違いなしの精巧なコンポーネント。こうしたこだわりが見られるのもアナログゲームの魅力だ

ゲームのルールはシンプルで、各々の好き嫌いを隠しながら全員で1つのコップにカフェラテの素材を入れていき、一番自分好みのフレーバーにできたプレイヤーが勝つというもの。各人の好みは冒頭に配られる「好き嫌いカード」に書かれており、自分の好みが他のプレイヤーにバレないようにうまく立ち回りながらカフェラテ作りをすることが重要となる。

手番では、材料コマをラテメーカーの中に入れる「材料の投入」、ラテメーカーからコップに材料コマを移す「ラテを注ぐ」、コップに入った材料コマを落とす「ラテをこぼす」の3つのアクションからいずれか一つを選択して行う。好みの素材が少ないと感じたら材料の投入やラテを注ぐアクションでフレーバーを増やし、逆に嫌いな素材が入っている場合はラテをこぼして調整することができる。

ただし、これらのアクションがあからさますぎると、他のプレイヤーに好き嫌いがバレるリスクが上がる。自分の思い通りになるようなアクションをしたいが、相手にヒントを与えるのは避けたい……という、正体隠匿系のゲームならではのジレンマを味わえる。

また、ラテをこぼすアクションの際にミルクコマかコーヒーコマを落としてしまうと、「ラテの味が薄くなった=おいしくなくなった」ということでペナルティが発生する。勢いあまってコップの中身をぶちまけてしまった場合などは、かなり悲惨なことになってしまうだろう。

かわいらしい見た目に反して、各人の思惑が渦巻くややビターな内容となっているのもこの作品の魅力。遊んだ数だけさまざまなフレーバーのカフェラテがで出来上がる、味わい深いゲームとなっている。

■全員が飲み過ぎて記憶喪失に!?“正体忘却系”の推理ゲーム「あののみ―あの飲み会を誰も覚えていない―」

「飲み過ぎて記憶がない」という、酒飲みなら誰でも一度が経験するであろう出来事をテーマにした作品が、ブース名「タロ大・島研究室」の「あののみ―あの飲み会を誰も覚えていない―」だ。こちらは正体隠匿系ならぬ“正体忘却系”のゲームとなっている。

めちゃくちゃ盛り上がった飲み会から一夜明けた朝。参加者が目覚めると、部屋には大量のピザ、布団をかぶったマグロ、歩き回るナマケモノ、さらにはモアイ像まで鎮座しているというカオスな事態になっていた。

各プレイヤーは事件のどれかの犯人もしくは火付け役だが、全員が記憶をなくしているため、誰が何をやらかしたかわからない状況になっている。そこで、「しじみ汁」を飲んで他人の行動を思い出しながら、自分だけ責任を逃れるために現場の証拠を隠滅・改ざんすることとなる。

手番で行えるのは、しじみ汁を飲んで他プレイヤーの記憶を見る「記憶アクション」と、証拠の隠滅・改ざんを行える「証拠アクション」の2つ。各プレイヤーはこれらのアクションを1回ずつ行う「パターンA」か、「証拠アクション」を2回行う「パターンB」のどちらかを選び行動する。

このゲームでは自分の記憶を見ることができないので、他人の記憶を頼りに自分が何の犯人で何の火付け役なのかを察していくことが重要となる。ただし、しじみ汁には限りがあり、全員の記憶を確実に見ることができないため、他プレイヤーの行動を見て全体図を察しなければならない。逆に言えば、自分の手番でのアクションが他人へのヒントにつながるということだ。

例えば、「記憶アクション」で他プレイヤーの記憶を見た後に「証拠アクション」でそれに直結するような行動を行うと、他のプレイヤーにも情報が筒抜けになってしまう。そのため、相手をうまく誤解させたり、煙に巻いたりするような行動を交えて場を混乱させることも作戦として必要になる。

そうして手番を進めていき、全員のしじみ汁がなくなったら、最も証拠を隠滅した数が多い「隠滅王」と自分の記憶カードを当てた「確信犯」を決定し、得点計算に移る。最も得点の低かった人が「一番責任が軽かった人」として勝利する。

ゲームとしては非常に楽しく愉快に遊べる作品だが、実際に飲み会でやらかした経験を持つ人にとっては、妙に他人事とは思えない感覚になるだろう。「自分は酒で記憶をなくした経験はないけれど、そういう経験を追体験してみたい」という人にもオススメだ。

■CMキャスティングの仕事をリアルに体感!監督が考えた理想のキャストを予想する「THE CASTING」

ゲームを通して職業を疑似体験するのが好きな人に遊んでほしいのが、ブース名「KOSEI」の「THE CASTING」。監督から依頼を受けて出演者などを提案する「キャスティングディレクター」の仕事を体感できる作品だ。

疑似職業体験……と聞くとルールが複雑な印象を持つかもしれないが、本作の進め方はいたってシンプル。プレイヤーは「監督」と「キャスティングディレクター」に分かれ、監督はお題に合わせたCMのキャスト人数・想定キャスト・CMの内容を考案し、キャスティングディレクターは監督が思い描いているキャストを予想し提案する。

監督がCMを考案するのに必要なお題カードは、クライアントを設定する「企業設定カード」、キャストが演じる関係性を設定する「キャスト設定カード」、ジャンルを設定する「ジャンル設定カード」の3種類。これらのカードからランダムで1枚ずつ引いてお題を決定し、それに合うCMの詳細を練っていく。

また、キャストの候補が書かれた「キャストカード」には、「俳優」「声優」「モデル」などの職業や特技・趣味、人気度を表すランクが書かれており、こうした情報をもとにしながら誰を起用するかを決定する。俳優の場合は年齢も書かれているので、「ちょっとシブめの人を使いたい」「フレッシュな若手を起用したい」といった理由でキャストを選定することも可能だ。

例として、企業設定カードが「お菓子・食品」、キャスト設定カードが「夫婦」、ジャンル設定カードが「コメディ」だった場合を挙げよう。この場合なら、夫婦ということでキャスト人数は2人、コメディというジャンルを考えるとどちらかが芸人だとイメージを付けやすい……という形でCMの軸を固めていく。この時、“新婚夫婦が初ゲンカ! 漫才のような口論を繰り広げるが最後に甘くておいしいお菓子を食べて仲直り”というような具体的なイメージまで固めておくと、より制作側としてのリアリティを味わえるだろう。

CMの詳細が決まったら、監督はキャスティングディレクターにキャスト人数と大まかなCMの内容だけを発表する。これを聞いたキャスティングディレクターは、4つの質問が書かれた質問カード3枚の中からどれか一つを選んで監督に質問し、その回答をもとに監督が選んだキャストを予想する。これを「提案」という形で監督に伝え、合っているかどうかを確認する。

なお、キャスティングディレクターは3回まで提案を行えるが、提案回数が増えるごとに獲得できるポイントが減っていく。一方、監督は提案内容が合っていれば、回数にかかわらず1人につき30ポイントを得ることができるので、キャスティングディレクターはなるべく少ない回数で当てること、監督は提案させる回数を増やしつつ最終的には選んだキャストを当ててもらうことが勝利のポイントとなる。

本作は、業界経験者や実際にキャスティングディレクターとして働いた経験を持つ人が制作に携わっているため、シンプルなルールながら現場でよくある質問やキャスト考案に必要な思考などをリアルに体感できる。「人生で一度はCMを作ってみたい」という人や、遊び感覚で職業体験をしてみたい人にはぜひプレイしてほしい。

■誰とも被らない答えをチョイスせよ!シンプルに盛り上がれる大喜利ゲーム「NICE CHOICE」

ゲムマで初めてボードゲームを作る人は少なくないが、その中でも今回筆者に刺さった作品がブース名「A.G.P.Team Timentier」の「NICE CHOICE」だ。お題となるイベントに何を持ち寄るかを全員が一斉に回答し、他のプレイヤーと回答が被らなければポイントを獲得できるという、いたって簡単な大喜利系パーティーゲームとなっている。

ゲームに使用するのは、27種が収録されているお題カードのみ。カードには「ハロウィンパーティー」や「B.B.Q.」などのイベントが書かれており、内容によっては「食材」「果物」といった持ち寄る物のジャンルが指定されているものもある。プレイヤーは相手の思考を読みながら、唯一無二の回答を瞬間的に導き出さなければならない。

ただし、オリジナリティを重視しすぎて頓珍漢な回答をしてしまうと、他プレイヤーからブーイングを受けてしまう。過半数が意義を唱えた場合は、その回答は「ナンセンス」だとしてポイントを得ることができない。

ここまではよくあるワードパーティーゲームだが、筆者がユニークだと感じたのが「KEY」という特殊項目が指定されているお題だ。この項目に記載がある場合は、誰か一人がその回答をしなければ全員の回答が「ナンセンス」になってしまう。

例えば、カレーを作るイベントの場合は「ルー」がKEYとして指定されている。もしこのお題で誰も「ルー」と回答しなければ、そもそもカレーを作ることができないため誰もポイントを得ることができない。こうした“そのイベントを行うために必須なもの”を誰が持ち寄るかという読み合いが発生する点が、このゲームの面白いポイントだろう。

なお、KEYも他プレイヤーと回答が被るのはNGなので、全員が安全パイとしてKEYを選ぶことはできない。そのため、「あいつはお堅い回答をしそうだから自分はあえて他の回答をしよう」「他の人は被るのを恐れて別の回答をするに違いない、自分がKEYを回答しよう」というように、お互いの関係性やプレイヤーの性格を考慮しながら回答を考える必要がある。

本作はイベントをテーマにした作品ということもあり、持ち寄り系のイベントで他の人と選んだものが重なったときの残念な気持ちや、カレーパーティーならルー、鍋パーティーなら出汁といったそのイベントに必須なものほど忘れがちという「あるある」がルールにうまく組み込まれている点も魅力。とにかく簡単に遊べることも相まって、ボードゲーム会に持ち寄る作品として「ナイスチョイス」になり得る作品だ。

■新潟・長岡の縄文時代をテーマにした本格ワーカープレイスメント「UMATAKA」

最後に紹介するのが、新潟県で活動しているボードゲーム制作サークル「銅鐸舎」が手掛けたワーカープレイスメント系のゲーム「UMATAKA」だ。長岡市の馬高遺跡から出土した「火焔土器」がテーマとなっており、ゲームを通して縄文時代の生活を体験できる。

このゲームでは、プレイヤーは信濃川沿いの丘に広がる集落で一族を率いる長となり、家族と犬を引き連れて生活に必要な資材や食料を獲得する。集めた資材で土器や住居を作り、一族が穏やかな生活を送れるように一年間を過ごすことが目標だ。

ラウンドは春夏秋冬の4ラウンドで構成されており、最初は5人の家族と2匹の犬を使って手番を行う。手番では、家族や犬をアクションスペースに置いて資材やコマなどを得る「配置アクション」、探索トラックのコマを進める「探索アクション」、土器や建物レベルの向上を行う「製作アクション」の3つを実行することができ、これらを繰り返しながら得点を積み上げていく。

本作は土器をテーマにしたゲームということもあり、どのタイミングで土器を作るかが非常に重要になってくる。土器を作るには一定の資材が必要となるが、作るタイミングが早いほど獲得できる得点の数字が大きくなる。また、ゲーム中で入手できる木の実を土器で調理することで、得点を伸ばすことができる。

ただし、土器を作ることに注力しすぎるとコマの数が足りなくなったり、探索トラックのコマを進めづらくなったりと、ゲームを進めるうえでいろいろと不都合が生じてくる。土器作りと建物レベルの向上のバランスを見極めながら、いかに効率よく生活を整えていくかが勝利のポイントだ。

全体的な内容は石器時代がテーマのワーカープレイスメント「ストーンエイジ」に近いものとなっているが、上記の土器に関するルールや、犬のコマを使う際には同数かそれ以上の人間が必要(犬の数が多いと人間が面倒を見切れないため)という設定など、縄文ならではの要素が随所に散りばめられている。

また、土器のタイルに使用されている写真は新潟県内の博物館から資料提供を受けているなど、リアリティのあるコンポーネントも魅力の一つ。縄文土器や文化が好きな人にとっては、コレクションとしても楽しめるだろう。

本作だけでも十分過ぎるほど遊びごたえがある内容だが、慣れてきた人や上級者向けには土器の種類を増やせる拡張版も用意されている。往年のワーカープレイスメント好きにはもちろん、縄文時代の文化が好きな人にも刺さる“超文化的”なボードゲームだ。

■関西ゲムマが3年半ぶりに京都で復活!2024秋はゲムマ史上初となる幕張メッセでの開催に

軽ゲーから重ゲーまで、今回もさまざまなアナログゲームが集まった「ゲムマ2024春」。最近は来場者層も幅広くなってきたからか、会場内にはキッズスペースが設けられるなど、多くの人が心置きなく楽しめるような工夫がなされていた。

そして、2024年9月21日・22日には「京都国際マンガ・アニメフェア」内での併催として、コロナ禍以降3年半ぶりとなる関西ゲームマーケットの開催が決定した。さらに11月16日・17日には、ゲムマ初となる幕張メッセにてゲームマーケット2024秋が開催される。次回はどんな作品に出合えるのか、今から首を長くして待っていよう。


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