前畑弾薬庫の移転・返還 合意から13年、進捗率わずか10% 長崎・佐世保

 2011年に日米両政府が合意しながらも、実現していない佐世保市の米軍佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)の移転・返還。市は返還に向けた工程と進捗(しんちょく)率を示した。「返還完了」を100%と設定。合意から10年以上経過しているが、進捗率は本年度まででわずか10%。目に見える進展はない。
 前畑弾薬庫は、同市内の針尾島弾薬集積所(針尾弾薬庫)へ移転・集約する計画だが、国は、返還に向けた期間などは示していない。市はこれまでの国の説明などを基にして独自に工程と進捗率を定め、4月から始まった「第7次佐世保市総合計画後期基本計画」に盛り込んでいる。
 設定した進捗率は▽新たな弾薬庫の基本設計終了=30%▽環境アセスメントの終了=40%▽埋め立て承認などの手続き完了=60%▽埋め立て・移設工事への着手=70%-などとした。
 防衛省は24年度予算で、移転に向けた実証実験などの費用として、25年度までの2カ年で約14億6100万円を計上している。市の調べでは、08年度以降、移転にかけた予算は累計で約15億2500万円。24~25年だけで累計額に近い大幅増額になっており、市は26年度までに進捗率が20%に上がると想定。翌27年度までに基本設計に着手し、25%に引き上げる目標を立てた。
 市の目標通りに進むのか疑念を抱いている市議は「日米どちらも、喫緊に動かす話と思っていないのだろう。佐世保は国防に協力しているのに、日本政府は佐世保に甘えている」と批判する。弾薬庫の針尾島弾薬集積所に移転する計画に同意した江上地区自治協議会の栗山一彦会長(83)は「苦渋の選択として受け入れた。来ないなら、来ない方がいい」と話している。

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