「心にゆとり 生む場所に」元教諭の寺澤さん夫婦 “新しい食堂”あす開店 長崎・富士見町

 疲れたとき、困ったとき、忙しいとき、あそこに行けば少しだけ心にゆとりが生まれる-。地域にそんな場所をつくりたいと、元教諭の寺澤智恵(ともえ)さん(35)、祥(あきら)さん(31)夫婦=長崎市=が30日、“新しい食堂”を同市富士見町に開店する。家族や友人、地域の人たちの応援を受けながら二人の第二の挑戦が始まった。

プレオープンに駆け付けてくれた友人と談笑する祥さん(左)と智恵さん=長崎市、チエノワLabo

 二人は長崎県長崎市出身。智恵さんは小学校と高校、祥さんは高校の教壇に立つ日々を送っていたが、新たな目標に向かって、2022年3月にそろって退職した。祥さんの実家に隣接する古い空き家を夢の拠点に決め、昨秋に改修作業を開始。解体などできる部分は自分たちで取り組み、壁塗りなどは友人や地域住民も協力してくれた。
 店名は「チエノワLabo(ラボ)」。料理を作る智恵さんの周りに人が集まるようにと「智恵の輪(チエノワ)」と決め、集まってきた人の「知恵」の「和」が新たな「輪」として広がっていくようにとの思いも込めた。食事以外にも使える空間づくりをしていく予定で「ラボラトリー(実験室)」の意味も加えた。
 23~26日にプレオープンとして出来上がったばかりの店舗を公開した。客との交流が生まれるようにカウンターキッチンにし、古民家の痕跡を一部残して趣や懐かしさを感じられるようにした。
 プレオープン初日。寺澤さん夫婦の趣味であるサウナを好む仲間らが駆け付けた。市内でカフェを経営する中尾節子さん(56)は「何より二人の人柄がいい。きっと楽しい場所になる」と太鼓判を押した。
 「子どもたちも立ち寄れる場所に」という夫婦の思いを酌み、同じくサウナ仲間で大村市のミニチュア作家、北野トマレさんが中心になって作った駄菓子の“花輪”が開店祝いで贈られた。
 近くの菓子店オーナー、久松曜(てらす)さん(37)は、家族3人で訪れた。「一緒に地域を盛り上げていければいい」と同世代の挑戦を歓迎した。他の周辺の店も「遠慮せずに」とチラシの掲示などで協力してくれているという。
 「地域の人が集える場所に」。そう目標を掲げた智恵さんは「(教諭時代に)『子どもを地域で育てる』という部分が薄れてきていると感じていた。地域の一員として家庭や学校と一緒に育てるような場所にもしていきたい」と語った。

看板メニューのスパイスカレー=チエノワLabo

 営業時間は午前11時~午後8時(午後2時~5時は休憩)、金、土曜は午後9時まで。火曜定休。看板メニューは「食べた人がほっとするような」スパイスカレーで他に日替わり定食など。夫婦こだわりのクラフトビールとワインもそろえている。

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