閑静な住宅街で殺傷事件が2回も イギリスへ移住した日本人女性 肌で感じた現地の治安

閑静な住宅街でも油断は禁物【写真:Moyo】

海外旅行時はもちろん、移住するときに気になるのは、やはりその場所の治安。世界的に見ても安全な国として有名な日本から渡航する場合、とても心配する人も多いのではないでしょうか。ひょんなことからイギリスに移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。26回目は、イギリスやフランスに実際暮らして感じている、日本との治安の違いを紹介します。

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日本と海外の国々では外に出たときの空気感が違う

海外旅行先を考えるときはもちろん、住み慣れた日本を離れて海外に拠点を移すとなったとき、不安がよぎるのは治安面ではないでしょうか。ご存じのとおり、日本は世界でも安全で治安が良い国のひとつとされています。

国際的なシンクタンク、経済平和研究所(IEP)が毎年発表している「世界平和度指数(Global Peace Index)」の2023年版によると、対象国163か国のうち日本は9位にランクイン。私が住んでいたイギリスは37位、現在住まいのあるフランスは67位と、その差は歴然です。世界全体だと治安は悪化している一方という概要でしたが、日本は常に10位前後をキープしているようです。

普段、日本に住んでいると感じることはあまりないかもしれませんが、やはり海外で暮らしていると、一歩外へ出たときに独特な空気をひしひしと感じます。私は以前、ヨーロッパだけでなくアジアなどもよく旅行していて、国や地域によって、言葉には言い表しにくいけれど「何か違う」と、危険な空気を肌で感じることがよくありました。「こっちはおもしろそう。でもあっちは行かないほうが良さそうだな」のような感覚です。

幸いなことに、旅行でも海外暮らしでも、これまで大きなトラブルに巻き込まれたことはありません。そのため、肌で感じていたそのような感覚が、いざ住むとなったときにおおいに役立っていると思っています。

では、実際にイギリスやフランスの治安とはどのようなものなのでしょうか? 私が肌で感じていたことから友人のエピソードを交え、数回に分けてご紹介したいと思います。

とくにロンドンの治安は年々悪くなっている

まずはロンドンの、最近の様子を客観的な数字で見てみたいと思います。

イギリスには「CrimeRate UK」という犯罪に関する統計サイトがあります。そこで調べると、2023年のロンドンでの犯罪発生率は1000人あたり105件と統計が。

最も多い犯罪は暴力と性犯罪です。昼間人口1000人あたり30件に1件の割合で発生している計算に。さらに、イギリス全体の犯罪率(1000人あたり79.52件)と比べて、ロンドンは32%も悪いことが明らかになっています。

凶悪犯罪や窃盗犯罪は、ともに発生件数が増加。とくに最近の傾向として、ナイフを使った脅迫が急激に増加していて、ニュースでも気をつけるように頻繁に呼びかけています。

ロンドン内の地区別による犯罪率を見てみると、ウェストミンスター、ハックニー、カムデンなどが上位になっています。イギリス旅行をする際は、観光でおなじみの地域も犯罪率が高いことを知っておくと良いでしょう。

ウェストミンスターは、ウェストミンスター宮殿やバッキンガム宮殿、ウェストミンスター大聖堂などの有名な歴史的建築物、旧跡といった観光スポットが集まっているところ。そのため、観光客を狙った犯罪が多く起きているようです。

そして、ロンドンカルチャーの中心地・カムデンは昼間のマーケットはもちろん、ナイトスポットなども多数。ローカルの人や観光客が多く集まるため、窃盗や強盗、性犯罪などが多発しています。

また、ハリンゲイ、ニューハム、ケンジントン&チェルシーといった住居エリアが高いことがわかります。高級住宅街として名高いケンジントン&チェルシーは、そこに住む富裕層をターゲットに窃盗・強盗などが多く発生するようです。

ただし、この統計の上位の地区でないからといって安心はできません。私は、この統計で平均より安全とされている閑静な住宅街に住んでいましたが、白昼に殺傷事件が2回ほど起きました。

近辺が警察だらけになり、しばらく全面封鎖になったのを覚えています。普段から安心できると思っていて住んでいた場所で起きたため、とてもショックを受けたのと同時に、やはりどこにいても気を引き締めなければと思った出来事でした。

また、このサイトではポストコードを入力すれば地域の犯罪率が調べられます。旅行で滞在する地域や、引っ越しを考えている地域などを参考までに調べてみると良いかもしれません。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

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