伝統衣装「漢服」産業、ECの発展で急成長 中国山東省曹県

伝統衣装「漢服」産業、ECの発展で急成長 中国山東省曹県

  【新華社済南4月29日】中国山東省菏沢(かたく)市曹県は中国の伝統衣装「漢服」産業の生産地として知られており、十数年にわたる発展を経て、中小企業を中心とした精密で整った分業システムが形成されている。

 同県大集鎮孫荘村の孫学平(そん・がくへい)党支部書記は、「十数年前、村民は自分たちで作った衣装を携え、あちこちに出向いて販売し、一定の販売量はあったものの、市場シェアは高くなかった。偶然にも電子商取引(EC)発展の波に乗ってアパレル産業が急速に成長した」と述べた。

 ECのおかげで同県の衣料品販売は一転した。製品加工の完全な産業チェーンを構築しただけでなく、ここ数年で急速に国内の「漢服(漢民族の伝統衣装)」市場の4割を占めるまでになった。統計によると、2023年の総売上高は百億元(1元=約22円)を超え、今年に入ってからのオンライン販売額は前年同期比90.8%増の19億8千万元に上っている。

 県内で起業を目指す人や帰郷する留学経験者の受け皿を手がける「有愛共同創業基地・留学帰郷基地」の担当者、李字雷(り・じらい)氏は、「産業が集積する曹県は、漢服製造について低コスト、短納期という優位性があるほか、若者たちの帰郷によって販売やデザイン、運営などが急速に強化され、ブランド化や高品質化が進んだ」と指摘。基地には共同創業に加わるライバー(ライブ配信者)やオペレーターなどスタッフ300人余りがおり、データやテクノロジーを活用して漢服産業の質の高い発展を推進するインテリジェント化された生産ラインも導入されているという。

 ますます多くの高学歴人材が帰郷して起業や就職することを第一の選択肢としている。曹県には現在、ECに従事している博士が3人、修士が約百人、大卒者が約1万人いる。ここ数年で5万人が故郷に戻り起業したことで、35万人がECに従事するようになった。

 ECの急速な発展を受け、同県ではここ数年、産業発展に向けた「グリーン(環境配慮)ルート」を構築するために、多くの新たな機関やメカニズムを革新的に立ち上げた。

 曹県漢服協会の胡春青(こ・しゅんせい)会長によると、同県はコモディティー化競争を避けるため、同協会を設立し、企業とデザイン会社や大学などとの協力メカニズムの構築をサポートし、自社ブランドの立ち上げを奨励している。また、独自イノベーションを保護するため、知的財産権を専門的に保護する「知的財産権快速保護センター」を設立し、特許出願の処理時間を従来の180日から10日に短縮したという。

 同県の民間経済は現在、活力に満ちており、経営主体は15万5千を数える。常住人口で計算すると、約10人に1人が経営主体で、30人に1人が企業経営者となっている。(記者/王歓)

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