<3>対応変わる窓口にほん弄 受給を諦める 希望って何ですか

困窮状態にありながら行政への相談過程で生活保護申請を諦めたひかるさん(左から2人目)。生活は今も上向いていない=4月中旬、県央

 「やばい、ガスが止まった。お風呂が使えない」

 2023年10月頃。県央在住、ひかるさん(28)=仮名=は、友人に電話で窮状を訴えていた。

 小学生2人、保育園児2人を育てるシングルマザー。当時は所持金と銀行残高を合わせても、数千円しか残っていなかった。

 週5日、物流会社でのアルバイト収入は10万円弱。ただ、風邪など子どもの体調不良が続いており休みがちだ。物価高が止まらない中、児童扶養手当などを含めても家計の管理はうまくいかず、常に逼迫(ひっぱく)していた。

 フードバンクなどを利用し、急場をしのぎながら周囲にも相談を重ね、生活保護の利用を決めた。意を決し、1人で自治体の申請窓口を訪ねた。

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 1度目の相談では「今は(保護を)受けるべき時」と話が進んだ。後日、2度目の相談で様相が変わった。別の職員に日々の収支を事細かに聞かれ、「今の収入で生活できる範囲ではないか」と告げられた。

 「『切り詰めればやっていける』と言われたら、そうなのかなって思うしかなかった」とひかるさん。保育園の送迎や通勤に欠くことのできないマイカーを手放す可能性も示唆され、さらに尻込みした。手続きを続けるか否かは「考えます」とだけ伝え、相談を切り上げた。以来、窓口を訪れたことはない。

 ひかるさんのケースのように、職員によって窓口対応が異なることは「あり得る」と、首都圏生活保護支援法律家ネットワークに所属する服部有(はっとりゆう)弁護士(県弁護士会)は指摘する。

 「『自立をうながすべきだ』『受けることで堕落してしまう』と考えて対応してしまう職員はいる」。さらに相談者が自分の状況をうまく説明できないなど、やりとりに齟齬(そご)が生じると「追い返すような対応」になることも少なくないという。

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 その後、ひかるさんは子ども食堂などを利用するようになり、食費を少しだけ浮かせられるようにはなった。ただ、時給900円台の今の仕事では、家計は一向に上向かない。

 でも、より給料の高い仕事を探すこともためらっている。以前、アルバイトで働いていた飲食店でのトラウマがあった。

 子どもの体調不良で急に休む度、店長はいらついた様子で「じゃあ店を閉めればいいんだね」などと嫌みを繰り返した。そのやりとりに耐えられず退職した。

 現在の職場は家庭の事情に理解があるだけに「安心して働ける。次の職場がそうとも限らない。なかなか変えられない」とこぼす。

 子どもたちの食欲はますます旺盛だ。成長を思えば、食費を削ることは考えられない。進学や学費など先の不安が頭をよぎる。

 「とにかく、今は頑張るしかない」。ひかるさんは、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

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