どう猛犬種の対策急務 栃木でもピットブルかみつき4人けが 茨城では飼育規制条例も

茨城県では「特定犬」として飼育規制が課されているピットブル(本文と写真は関係ありません)

 栃木市内の路上で今月上旬、犬のピットブルにかまれて男女4人が軽傷を負った。ピットブルはどう猛な犬種として知られ、かんだ犬は体長約1メートル。茨城県は危害を加える恐れがあるとして、条例で飼育規制を課している。全国的にも大型犬などによるかみつき事故は後を絶たず、本県でも対策が求められている。

 「助けてー」。7日午後、同市神田町の路上で女性の叫び声が響いた。散歩中の無職女性(25)のポメラニアンに、ピットブルが突然襲いかかった。助けようとした女性(50)は「すごい勢いでポメラニアンを引きずり回していた」。自身も腕をかまれ「あごの力が強く、とにかく離れなかった」と恐ろしさをかみしめる。

 現場に居合わせた近隣男性(34)によると、「家から持ち出した飼い犬のリードや、ベルトを首輪代わりにして取り押さえようと、その場はパニック状態だった」。その後、警察官2人によって捕獲されたが、犬の興奮状態は続いていた。

 栃木署によると、かんだ犬の飼い主は50代男性で、計3頭のピットブルを飼育。当日は2頭が逃げ出し、うち1頭は事故現場近くで電車にはねられ死んだ。

 通常は家の中で飼っているが、時々、庭でリードをせず遊ばせていたという。この日は庭に放していたが、家の周りは塀で囲まれ、逃げ出せるような状況ではないとしている。男性は「数日前に工事業者が入り、逃げるのを防ぐフェンスが動かされ、そこから逃げ出したのではないか」と署に説明した。

 飼い主宅の付近には中学校もあり、腕をかまれた女性は「逃げ出したのは日曜日だったが、平日の登下校の時間だったら」と肩をすくめた。

 かみつき事故を防ごうと、茨城県は1979年に施行した条例で、ピットブルや秋田犬など8犬種を「特定犬」として定め、屋外ではおりの中で飼うことを義務付けている。78年に女児が大型犬にかみ殺される2件の事故を踏まえた対応だった。同県以外では、佐賀県や札幌市でも同様の条例がある。

 本県では条例で、飼い犬の放し飼いを禁じ、常時つなぎ留めておくよう義務付けているほか、事故や苦情があった際は指導するなどの対策を講じている。県の担当者は「現時点で特定犬の規定を設ける予定はない」との認識にとどまっている。

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