『怪獣8号』カフカの解放戦力が0%から0.01%に “ダサカッコいい”新たな主人公像が誕生

キコルとともに防衛隊員選抜の二次試験に挑むカフカ。『怪獣8号』(テレビ東京系)第3話「リベンジマッチ」では、新キャラクターが多数登場する華やかな回となった。

防衛隊員選抜の内容は一部が体力検査、二部が資質検査。駐車場で出会ったキコルに対して「覚えとけ、おじょーちゃん!」と大口を叩いていたカフカだったが、いざ二次試験が始まると苦戦する。レノによると、二部の資質検査は毎年内容が変化するため対応が難しく、カフカは体力検査で確実に点数を稼いでおかなければならなかった。32歳とはいえ、カフカは怪獣専門清掃業者「モンスタースイーパー」で働いていた経験があり、きっと体力には自信があったはず。だが、本人の予想以上に体力が衰えており、225人中219位という散々な結果になってしまう。キコルからも「早かったわね、吠え面かくの」と馬鹿にされる始末。

「怪獣8号」の力を解放してしまえば、きっと良い結果をもたらすことができたが、カフカはあえてそれをしなかった。そこにはミナの隣に立つ男として恥ずかしい行動はできないという思いがあったはずだ。だが、『怪獣8号』ではカフカを単に“カッコいい男”としては描かない。「俺だけそんな力を使ったら卑怯だろ」と語った後に「カッコつけちゃったけど、使っとけばよかったよぉぉ!」とレノに泣きつくまでがお決まりだ。だが、時折見せる人間味がカフカを共感性の高いキャラクターにしている。これはこれまで少年漫画で描かれてきたものとは明らかに異なる主人公像だ。

そして第3話からは新キャラが続々と登場。東京討伐大学首席卒業の有望株のハルイチと、八王子討伐高専首席卒業の実力者・伊春、陸上自衛隊の若手ホープとして将来を約束されていたが、それを蹴って防衛隊に編入してきた葵という実力者が勢揃い。さらに今年は例年と比べてもエリートたちが揃っているようで、その最たる存在がキコルだ。16歳でカリフォルニア討伐大学を飛び級で最年少首席卒業し、史上最強の逸材と称されており、エリートたちの中でも一際存在感を放っている。そして第3部隊副隊長で選抜試験の選考委員長を務める保科もかなり強烈なキャラクターだ。

何が行われるのか未知数だった二部で行われることになったのは“怪獣の討伐”。そこで怪獣筋肉繊維で構成された身体能力を大幅に強化する特殊なスーツである「防衛隊のスーツ」がそれぞれに支給される。ハルイチや伊春が水準以上の解放戦力を記録する中で、カフカが記録したのは0%。つまりはスーツの力を引き出すことができていないということになる。異例ではあるが、46%を記録しているキコルとは雲泥の差だ。

最終審査で課されたのは広大な市街地型演習場に放たれた本獣と余獣36体を討伐すること。第3話では静かなシークエンスを淡々と進めてきたが、キコルと怪獣の戦闘シーンではアニオリ描写を交えながら、臨場感のあるカメラワークで丁寧に描いていたのが印象的だった。ここまでの数話を見てきた時にアニメ『怪獣8号』では怪獣との戦闘を重点的に描いていることがわかる。

カフカは怪獣清掃専門業者で得た知識を活かしてハルイチのサポートに回ることを決めたが、その瞬間、余獣の不意打ちを受けて致命傷を負ってしまう。命の危険がある場合には管制室の命令でシールドが張られてしまうが、それは同時に失格を意味する。万事休すかと思われたカフカだったが、キコルが現れカフカを救出。しかし、カフカは足を骨折してしまいもう動くことはできない。保科からもリタイアを勧められるが、カフカは「今度は絶対諦めねぇ!」と戦い続ける覚悟を決める。原作では特に明示されていなかったが、アニメではカフカが立ち上がったタイミングで解放戦力が0%から0.01%に上昇するという演出が追加されていた。カフカにはまだ可能性が残されていることを暗示する素晴らしい描写だった。

このままだとキコルが全ての怪獣を倒してくれそうな気もするが、それではカフカの夢は敗れてしまう。カフカにチャンスが残されているとするならば、それは「怪獣8号」に変身するこしかない。果たして逆境を乗り越えることができるのか。
(文=川崎龍也)

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