国が加速器連絡会を設置 ILCなどの情報共有を促進 岩手からは政府に早期の判断求める声

 【東京支社】内閣府と文部科学省は、担当部局で構成する「将来の高性能加速器に関する連絡会」を設置し、国際リニアコライダー(ILC)などの情報共有を進めている。研究者や関係省庁の検討状況を把握する目的。ILCの東北誘致が正念場を迎える中、取り組みの推進が期待される。

 政府が策定した統合イノベーション戦略2023に「高性能加速器開発に資する技術開発を着実に推進する」との方針が示されていることを受け、組織が発足した。

 内閣府の科学技術・イノベーション推進事務局や文科省の研究振興局基礎・基盤研究課の担当者が必要に応じて会合を開く。初回は2月に開き、米政府の科学諮問委員会(P5)が素粒子物理学に関する方向性をまとめた報告書の内容などについて意見交換した。

 4月下旬の会合では、高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)の浅井祥仁機構長がILC計画を巡り、世界の研究者コミュニティーの動向などについて説明した。

 文科省の村松哲行素粒子・原子核研究推進室長は「加速器の技術開発を進めるには担当する文科省だけでなく、内閣府の一段高い視野が必要。関係者が連携を密にして情報共有を図る」と狙いを語る。

 岩手県内からは政府に早期の判断を求める声が上がる。東北ILC事業推進センター代表の鈴木厚人県立大学長は、中国で進む大型加速器の建設計画が世界の主導権を取ろうとする勢いだと指摘。「加速器に関する検討のもう一方で、政府はILCに対する態度を早期に表明し、主導権を持って世界との協議を進めてほしい」と訴える。

 ILCは地下トンネルに直線型加速器を設置し、宇宙創生の謎に迫る国際プロジェクト。北上山地(北上高地)が候補地とされ、日本政府が誘致の可否を検討している。

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