『光る君へ』板谷由夏、“夫”井浦新との最期を語る 「私たち『今まで幸せだったよね』って」

吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー動画「君かたり」が公開されている。第17回「うつろい」の放送後には、高階貴子役の板谷由夏、藤原道隆役の井浦新が登場した。

第17回では、道隆が体調を崩し衰弱し始める。一族の先行きを案ずるあまり、常軌を逸していく姿は不気味に映った。道隆は、道兼(玉置玲央)と道長(柄本佑)が結託して自分を追いやろうとしているのだと誤解して声を荒らげたかと思えば、道兼の手をとり「わが家を頼む……」と懇願する。娘の定子(高畑充希)には鬼気迫る表情で皇子を産めと迫った。挙げ句の果てに、道隆は清涼殿に押しかけると御簾をめくり上げ、一条天皇(塩野瑛久)に対し「伊周を関白に」と必死の形相で迫った。

正気を失った道隆だったが、貴子が寄り添いながらの最期は穏やかだった。これまでの物語でも十二分に感じられるほど、道隆と貴子は仲睦まじい。道隆の心の支えとなっていた貴子は最後の瞬間まで道隆に寄り添った。貴子を演じる板谷が涙を堪えながらも気丈に振る舞う姿に胸を打たれる。

貴子を演じた板谷は、道隆の最期のシーンについて「悲しかったですけど、でも、めちゃくちゃ愛した人が私が詠んだラブレターのような歌を最後に詠んで死んでいくってなんてロマンチックなんだろうって思っていました。ロマンチックっていうか、すごくやっぱりお互い情熱的な恋愛をしていたんだなと思って」「井浦新くんとも言っていたんだけど、死んでいくときに、出会ったころの話を2人でしながら死んでいく夫婦っていいよねって話していたの」とコメント。板谷は脚本家・大石静が描いた2人の絆を感じ、「悲しいんだけど2人で共有する思い出を話し合えるっていう幸せ感もあったし、『さようなら』っていうよりも『私たち今まで幸せだったよね』って2人で共有できる思い出がたくさんあるっていうほど幸せなことはないから、それはすごくほわんとしました」と続けた。

道隆の父・兼家(段田安則)や道隆が一族の繁栄を一番に考えて行動する中、貴子もまた一族の栄華のために動く。貴子は表立って野心をあらわにする人物ではないものの、道隆が位を上げていくのはさも当たり前、といった雰囲気を醸し出したり、伊周(三浦翔平)の出世や定子が後宮の長となることを望んで手を回したりと、陰ながら活躍を見せていた。中関白家の中で、誰よりも肝が据わった人物に映る。

板谷自身もインタビューの中で、政治の世界でのし上がることをものともしない貴子の強さについてコメントしている。「貴子も一緒に夫婦ともども、家族ともども、一緒にあがりたいっていう野心というか、『いけいけ~!』って感じだったんじゃないですかね」「この時代の女性って位が高いほうがいいって思い込んでいるところがあるから『うちの旦那いけ~!』って感じだったんじゃないかな」と語った。貴子の心情を語る板谷のハキハキした口ぶりが印象深い。

道隆亡き後、伊周や隆家(竜星涼)、第17回で策略家な一面を見せた定子が家を引っ張っていくことになるはずだ。貴子は彼らを陰ながら支えることになるのだと思うが、権力争いや噂話が取り巻く政治の世界を力強く生き抜き、この家族の核となるのは貴子な気がしてならない。

(文=片山香帆)

© 株式会社blueprint