「スーパーバンタム級は“モンスター”が支配している」海外メディアは井上尚弥の圧倒的強さを強調! 一方、悪童・ネリにはシビアな評価も

5月6日に東京ドームで開催されるボクシングの世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥と、元世界2階級制覇王者ルイス・ネリ(メキシコ)とのビッグマッチ。一週間後に切って落とされるこの対戦に向けて、各国メディアはヒートアップ。様々な展望がなされている。

ネリの地元であるメキシコの放送局『TV Azteca』のスポーツ専門サイトは、「ネリは無敗の日本人選手を倒すという使命を持って日本に赴く。東京ドームでの試合に向け、雄叫びを上げる『パンテーラ(豹)』は、常に規律を守ってきたわけではないが、今回は違う。どんな展開になっても、これに応じるつもりだ。彼は対戦相手などをよく研究しており、『モンスター』にも恐れを抱いていない」と、同選手が並々ならぬ意気込みをもって決戦に臨むことを強調した。

ネリ自身も、米ボクシング専門サイト『Boxing Scene』のインタビューで、「俺が井上の立場であれば、この試合は受けなかっただろう。彼が勝っても何も得るものはなく、逆に失うものは大きい。しかし、俺には何も失うものはない」と強気のコメント。さらに、「俺はすべてを懸けて臨む。リスクを恐れず、リング上で死ぬことも厭わない」と覚悟の程を表わすとともに、井上にリスペクトを示しながら十分に勝機があるとも指摘している。
ただ一方で、異次元な強さを発揮して26勝23KOの戦績を築いてきた井上に対してはあまりに分が悪いとの見方は多く、それは各ブックメーカーのオッズにも反映されている状況だ。ベッティング専門サイト『ODDS CHECKER』によれば、井上の勝利に「1/12」、ネリの勝利に「13/2」、引き分けに「16/1」というオッズが設定されており、他も数値こそ違いがあるものの、明確に王座防衛の可能性が高いことを示した。

どちらの選手がどのラウンドで勝つかを予想する「ラウンドベット」でも、井上の6ラウンド勝利が「1/8」で最もオッズが高く、同選手の5ラウンド勝利が「17/2」、7、8、4ラウンドがそれぞれ「10/1」、3ラウンド勝利が「11/1」、9ラウンド勝利が「12/1」、2ラウンド勝利が「14/1」、10ラウンド勝利が「17/1」、1ラウンド勝利が「20/1」、12ラウンド勝利が「25/1」で、ネリについてはどのラウンドでの勝利も「100/1」となっている。 スポーツ専門チャンネル『ESPN』のメキシコ版は、今年ここまでのボクシング全17階級の状況を紹介しながら、試合のグレード、活動ぶり、エンターテイメント性からそれぞれを評価しているが、その中でスーパーバンタム級については「近年は“モンスター”こと井上がこの階級を席巻している」と紹介し、この31歳の王者について以下のように綴った。

「彼は4つの異なる階級で世界王者なり、また2つの階級では議論の余地がないほどの実力を示している。『ESPN』でのパウンド・フォー・パウンド・ランキングでは2位につけている日本の超一流スーパースターである。世界のボクシングファンは井上の存在を認知し、その偉大さを認めている」

そして、スーパーバンタム級におけるライバルとの関係については、「現時点で井上と他の選手を比べると、顕著な才能の差があり、彼はこの階級を支配している。例えば、ムロジョン・アフマダリエフ、ジョン・リエル・カシメロ、マーロン・タパレス、サム・グッドマン、イライジャ・ピアース、TJ・ドヘニー、ブライアン・メルカド、リアム・デイヴィス、ホセ・ティト・サンチェス、ライーズ・アリームなど、非常に競争力のある有望株はいる」と、名だたる実力者の名を羅列しながら、井上がいかに抜きん出た存在であるかを示している。
もちろん、「5月6日には経験豊富なネリが、井上と対戦する」と世紀の一戦にも言及しているが、同メディアは「この階級には肉はあるが、ジャガイモはない。井上によって食べられてしまったからだ」とユニークな表現で、井上が圧倒的な存在感でスーパーバンタム級を支配しているため、他の選手が彼に追いつくのが難しい状況であることを強調した。

34年前、東京ドームでのタイトルマッチで、絶対王者として圧倒的有利とされたマイク・タイソン(米国)は、ジェームス・ダグラス(米国)に10ラウンドで衝撃的なTKO負けを喫した。世紀の番狂わせが起こった舞台で、ネリは当時の再現を狙っているが、井上は力の差を見せつけてはね返せるのか。非常に興味深いところである。

構成●THE DIGEST編集部

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