鉄道新駅開業で医療費が削減、大阪公立大学などがメディカルビッグデータから推計

大阪公立大学大学院と日本システム技術株式会社は、大阪の鉄道新駅開業による医療費削減効果を分析した結果、1人あたりの累積医療費支出が有意に減少していたことを推計した。

公共交通機関を中心とした都市政策の中で、鉄道新駅開業は不動産価値を向上させる効果などが報告されている。また、鉄道新駅開業は、近隣住民の生活行動を変容させる効果もあることが解明されていたが、急増する医療費支出の抑制という観点から近隣エリアに及ぼす効果は不明だった。

研究グループは今回、2018年3月に開業したJR総持寺駅(大阪府茨木市)の開業による医療費削減効果を分析した。研究では、日本システム技術株式会社が保有する、匿名化された約800万人のレセプトデータをソースとしたビッグデータ(メディカルビッグデータREZULT)を利用した。

その結果、JR総持寺駅の近隣エリアにおいて、新駅開業後の4年間における1人あたり累積医療費支出が、99,257円ほど有意に減少していたことを推計した。この結果は、交通機関へのアクセスが増加することで交通機関利用者の身体的活動が増加し、医療費減少につながる可能性があることを示唆する先行研究と一致しているという。

個々の患者や個人ではなく、集団やコミュニティ全体の健康を改善する政策や介入を行うアプローチはポピュレーションアプローチと呼ばれる。今回の結果は、鉄道新駅開業がポピュレーションアプロ―チとして医療費支出を抑制していた可能性を示す、意義のある研究成果だとしている。

論文情報:

【Journal of Transport & Health】Health expenditure impact of opening a new public transport station: Anatural experiment of JR-Sojiji Station in Japan

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