“インドの狂虎”タイガー・ジェット・シン「旭日双光章」受章、思い出される伝説の「伊勢丹前襲撃事件」

(写真・アフロ)

4月29日、故アントニオ猪木さんの最大のライバルとして知られ、新日本プロレスや全日本プロレスで活躍した悪役レスラー、「タイガー・ジェット・シン」(80)がXでトレンド入り。29日付で発表された令和6年春の叙勲受章者として、旭日双光章に選ばれたことを受けてのものだった。

「シンさんといえば、トレードマークのターバン姿で誰彼構わずサーベルで襲いかかるパフォーマンスで、“インドの狂虎”の異名で知られたトップヒール。猪木さんとの血で血を洗う一連の抗争は、プロレスファンにはあまりにも有名です。一方、地元のカナダ・トロントでは事業家としても大成功をおさめており、慈善団体も運営。地元にはシンの名前を冠した学校まであるほどです。今回は、2011の東日本大震災に心を痛め、福島県で自宅を失った児童らに義援金を送ったことなどが評価されての旭日双光章受章となりました」(スポーツ紙記者)

シンのトレンド入りに、Xでは著名人も反応。2000年代に『ハッスル』のリングでシンと対戦したことのあるレイザーラモンRGは自身のXで、《タイガー・ジェット・シンさんが旭日双光章受賞!ハッスルにてコブラクローもサーベルも流血もいただきました。新幹線もサーベル持って入るし僕のマネージャーも襲われましたが「プロとは何か」をしっかり教えていただきました》とコメント。

また、LINEヤフー代表取締役会長の川邊健太郎氏もXで《タイガー・ジェット・シンさん、叙勲、おめでとうございます!サーベル振り回して並いる日本人達を殴打しまくって、勲章を得たのはシンさんぐらいでしょう!》と、つづった。

1973年5月に新日本プロレスに初来日したシンの名を、一躍、全国的に有名にしたのが1973年11月15日に起きた「新宿伊勢丹前襲撃事件」だ。

「新宿伊勢丹前襲撃事件とは、1973年11月15日、新宿で倍賞美津子さん(当時の猪木夫人)と買い物中だったアントニオ猪木さんを、シンさんが新宿伊勢丹前で襲撃した事件です。猪木さんはガードレールやタクシーのボンネットに頭からぶつけられ負傷・流血。平日の夕方、多くの人がいるなかでの凶行に、警察も出動する騒ぎとなり、一般紙でも大きく報じられた伝説の事件です。

後年になって、猪木さんは『話題作りのために自身が発案した演出』だったことを明かしていますが、シンさん自身も『日本の人々は今もこの事件のことを覚えている』と語ったように、この一件が、自身を悪役スターとして押し上げてくれたことを認めています」(同前)

そんなシンが、東日本大震災が起きた2011年の取材で語った言葉が、2021年3月の「Number web」で明かされている。

《東日本大震災のニュース映像をテレビで見たときは、あまりのショックで全身に鳥肌が立ったよ。(中略)とにかく金縛りにあったような感じになって、涙が止まらなかった。この私、タイガー・ジェット・シンが赤子のように泣いていたんだからね。私は数えきれないほど日本に来ているから、仙台や福島にも友人がたくさんいて、あのニュース映像を見たあとすぐに日本に連絡したんだよ。しかし、まったく連絡が取れなくてね。後日、何人もの友人が亡くなったのを知ったんだ……。もう何日も眠れない夜が続いたよ》

そして、シンは《人間は皆平等で人種なんか関係ないと思ってるから、私ができるすべてのことでサポートしたいと思ってるよ》とも語ってい

る。

ひとたびプロレスの会場となると、「目が合ったら襲われた」「誰も見ていないところで襲われた」といったファンの声がざらにあるほど、プロとして悪役に徹していたシンさん。会場でシンさんに襲われたことのある人たちも、いまはさぞかし誇らしい気持ちでいるに違いない。

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