自民王国での反乱。保守王国・島根の牙城がついに崩されました。
28日に行われた衆議院補欠選挙。島根1区は、立憲民主党の亀井亜紀子さんが自民党の錦織功政さんに勝利しました。小選挙区制となってから、初めて島根で議席を奪われた自民党。勝敗を分けたポイントはどこにあったのでしょうか。
細田博之前衆議院議長の死去に伴う今回の補欠選挙。開票結果は、亀井亜紀子さん8万2691票。錦織功政さん5万7897票。
9市町村のうち、松江市・安来市など7市町を亀井さんが取り、2万5000票近くの大差がつきました。
投票箱を開けてみると予想以上の大差となった今回の結果。
今回の選挙戦を振り返った亀井さん本人は…
立憲・亀井亜紀子さん
「皆さんから、『お願いします、変えてください』と声かけて頂くのは今回の選挙が初めてです」
やはり、勝敗を大きく分けたのは自民党派閥の裏金問題でした。
選挙戦序盤から立憲民主党は裏金問題を追い風に、泉代表をはじめ、野田元総理に蓮舫議員、かつては自民党で幹事長も務めた小沢一郎議員など、連日党の大物議員が島根入り。
島根1区を『自民王国での反乱』と位置づけ、党を挙げ総力戦で今回の選挙戦に挑みました。
立憲民主党 泉健太 代表
「本当は今の自民党政治には嫌気がさしてるんじゃないですか皆さん?」
BSSの調査では、投票に際し「政治とカネ問題」を考慮するとした有権者はおよそ7割。そして、自民党の支持者のうち約3割、錦織さんを推薦した公明党支持者の半数近くが亀井さんに投票すると答えました。
裏金問題を背景に、固いはずの自民王国の地盤が崩れたことで、亀井さんの勝利が揺るぎないものに変わりました。
立憲・亀井亜紀子さん
「増税メガネっていうあだ名が岸田さんショックだったんでしょうか。正面から増税を語らずに社会保険料として皆様の医療保険に上乗せして子育ての原資を新たに徴収しようとしてます」
そして、亀井さんは市民目線で街頭演説を重ねて無党派層の7割を取り込んだうえ、協力を取り付けた国民民主や社民に加え、「自主支援」を決めた共産党の支持層にも大きく浸透しました。
立憲・亀井亜紀子さん
「追われる立場というのは初めてですから、そういう意味ではすごく戸惑いといいますか、逆に戦いにくかったというのかしら…」
自民王国・島根で、序盤戦からリードして追い上げられるという経験したことのない選挙戦。不安を口にしつつも、投票日が近づくにつれ、裏金問題の追い風は強風に変わっていきました。
立憲・亀井亜紀子さん
「皆さんと一緒にここから一緒に島根を変え、政治を良くしていきましょう」
そして、投票が閉め切られた直後の28日午後8時すぎ。
亀井さん自身も驚いた、まさかの「ゼロ当確」。2万5000票近くの大差をつけて、自民王国・島根で歴史的な勝利を挙げました。
立憲・亀井亜紀子さん
「保守王国と言われる島根県での今回の結果ですから、何が私たちをこんなに怒らせているのか、ちゃんと感じて頂きたいと思う」
一方で、王国と言われる「島根」で大敗を喫した錦織さん。歴史的な敗北は、選挙戦スタートの日にも予兆がみられました。
自民党 小渕優子 選対委員長
「各地域におきまして、ニシゴオリ候補のために。最後の最後までニシゴリ候補を応援して頂けますように」
自民党 青木一彦 参院議員
「ニシコオリ候補は生まれも育ちもこの松江です」
自民・錦織功政さん
「ただいまご紹介にあずかりましたニシコリ功政でございます」
候補の名字が整わない第一声。細田前衆院議長が亡くなり、公募で錦織さんが後継候補に決まってから選挙告示までわずか3か月。
選挙戦の最中には、この人も。
自民党 小泉進次郎 議員
「松江で錦織さんと言ったら、別の錦織さんが浮かびますよね。今回の合言葉はこれです。逆転のにしこり。逆転のにしこり。逆転のにしこり」
週末ごとに岸田総理が2回も島根入りするなど、こちらも総力戦。
岸田文雄 総理
「保守王国・島根の底力で、ぜひ錦織さんを押し上げて頂きたい。逆転のにしこり。逆転のにしこり」
劣勢をはね返すテニスの錦織圭選手になぞらえ、「逆転のにしこり」を連呼して逆転を図りますが、それも裏金問題の強風にかき消されていきました。
自民党島根県第1選挙区支部 嘉本祐一 事務本部長
「短い準備の後援会活動、政治活動という限られた中で、それがなかなか新人の候補が、なかなか浸透が出来なかった」
自民・錦織功政さん
「(批判は)自分に直接何か当てられるってことじゃないと思うんです。だからこそ私、やっぱりその怖さを感じたし。見えてれば計れるけど、見えないから怖いんです」
政治とカネ。日本中に吹いた逆風が唯一の与野党直接対決という形で島根1区に集中し、王国・島根で自民党は歴史的敗北を喫する結果となりました。