バイオリン職人へ“聖地”で修業 新見・石井さん 秋にもイタリアへ

 新見市の地域おこし協力隊員で、市産木材を使ったバイオリン作りに取り組む石井英希さん(41)=同市=が、今秋にも弦楽器製作の本場・イタリアで修業に入る。これまで独学で技術習得に励んできたが、本格的に職人の道へと進むことを決意。「何年かかるか分からないが、新見での活動で見つけた目標。一人前になることで恩を返したい」と話す。

 石井さんは大阪市出身。音楽とものづくりに興味があり、会社勤めの傍ら始めたギターやバイオリン作りが高じて40歳を前に退職し、職業訓練校で木工技術を学んだ。活動拠点を探す中で2022年5月、地元産材の活用人材を求めていた新見市の隊員となった。

 新見市では木の椅子や時計の工作ワークショップを開くなど、市域の86%を森林が占めるまちの魅力をアピール。バイオリン作りにも本腰を入れ、連日8時間、のみやかんなを持ち続けてきた。

 今年3月には3本目を完成させ、周囲の市民らから「すごい」と感心された。ただ、自分では継ぎ目に若干の隙間があったり、曲線が滑らかでなかったりと細部の出来具合に満足できずじまい。「このままでは中途半端に終わってしまう」と、隊員2年目の任期終了後、イタリアに移り住むことを決めた。

 現地では歴史にその名を残す楽器職人ストラディバリが工房を構え、“バイオリン製作の聖地”とも呼ばれる北部の都市・クレモナの専門学校か工房で腕を磨く計画。石井さんは「年齢的な不安はあるが、技術をとことん突き詰めたい」と前を見つめる。

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