『366日』広瀬アリスと長濱ねるが見せた美しい友情 奇跡的に目覚めた遥斗には“異変”が

今年の春ドラマは、偶然にも主要な人物が“記憶障害”を抱えている設定が多い。杉咲花が記憶障害の脳外科医を熱演する『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)、生見愛瑠扮する記憶を失ったヒロインが結婚指輪を送ろうとしていた相手を探す『くるり~誰が私と恋をした?~』(TBS系)、松下洸平が主人公と恋に落ちる記憶喪失の男性役で視聴者を胸キュンさせている『9ボーダー』(TBS系)。そこに、『366日』(フジテレビ系)が加わった。

転落事故で頭を強く打ち、寝たきりの状態だった遥斗(眞栄田郷敦)。第4話では、奇跡的に遥斗が目覚める。だが、10年以上忘れられないくらい好きだった明日香(広瀬アリス)に向ける彼の目には困惑の色が浮かんでいた。

遥斗が入院してから3カ月。未だ意識が戻らない遥斗に、明日香たちは日常で起きた大事なことを話すようになっていた。明日香は勤務する音楽教室の講師たちからチャリティーコンサートに出ないかと誘われるも、自信がなく断ってしまったこと。智也(坂東龍汰)は野球で肘を故障し、手術が必要だが、主治医から復帰までには半年から1年かかると言われたことを打ち明ける。もちろん、遥斗から返事はない。それでも、いつも太陽みたいに明るく、そばにいるだけで元気が湧いてくる遥斗にみんな自然と悩みを聞いてほしくなるのだろう。

莉子(長濱ねる)も2年付き合った亘(岩永丞威)と結婚することを遥斗に報告する。その場に居合わせた明日香と智也も祝福するが、内心は複雑だった。智也はおそらく莉子に気があるのか、彼氏がいることも知らなかったためにショックを受けた様子。一方、明日香が素直に喜べないのは、亘の携帯に別の女性から連絡が来ていたのをたまたま見てしまったからだ。亘は母親からだと言っていたが、その相手はまさかの妻だった。

介護福祉士として働きながら、理学療法士の資格を取るために勉強中の莉子。大変なときも献身的にサポートしてくれた亘から結婚していることを告げられ、莉子は大きなショックを受ける。亘は妻とは3年前から別居中で、離婚の話も出ていた。だが、莉子を騙していたことには違いない。明日香は「もっといい人が現れる」と励ますが、莉子は「何かを頑張ってきたことがない明日香に私の気持ちはわからない」と突き放す。

期待しなければ、傷つくこともない。そう思い、端から色んなことを諦めてきた明日香には莉子の言葉が刺さった。だけど、遥斗のことは諦めず、今でも奇跡を信じている。そんな明日香の気持ちも莉子にはわからない。「あなたにはわからない、なんて言い合ったって意味がない」という明日香の言葉は正論だ。莉子も頭ではわかっているが、傷ついている今、それを素直に聞き入れるのは難しかった。

28歳の明日香たちはいわば、人生の過渡期に立っている。夢を追い続けるか、諦めて現実的な道を探すか。今の仕事を続けるのか、転職するのか。結婚するのか、しないのか。子供を産むのか、産まないのか。他にもたくさんの選択を迫られ、元気そうに見えても、みんな何かしらの悩みを抱えている。そんな中で今まで仲が良かった人と価値観が合わなくなったり、相手が自分より幸せそうに見えて妬ましく思えたりして、だんだん疎遠になっていくことも。

いずれ、また道が交わる時が来る。そう信じて一旦離れるのが結果的に良いこともあるが、絶対にその時が来るとは言い切れない。それこそ、和樹(綱啓永)が遥斗に謝るタイミングを見失ってしまったように。その和樹が見舞いにきたタイミングで、遥斗の発作が起き、明日香はいつ何が起きるかわからないことを実感する。主治医の池沢(和久井映見)にも「だからこそ今日を悔いがないように生きないとね」と言われ、莉子に「ずっと友達でいたい」と伝えた。莉子も明日香に謝罪。亘と別れてから溜まっていた感情を吐き出し、二人は無事に仲直りする。大人になってから、こうしてぶつかっても仲直りして一緒にいたいと思える相手がいるというのは貴重なことだ。

明日香は、高校時代に莉子と友情の証を刻んだスケッチブックを眺めていると、そこに遥斗の文字で「いつもパワーもらってる」と書いてあるのを見つける。音大を卒業していることが条件だと言われ、音楽講師になる夢を諦めてしまった明日香は、そんな人間が音楽をやる資格はないと思っていた。だが、明日香が野球を頑張る姿に励まされていたように、遥斗もまた音楽室から聞こえてくる明日香のクラリネットの音色にいつも励まされていた。私たちも自分の知らないところで、誰かの心を動かしているのかもしれない。そう思うだけで、なんだか力が湧いてくる。

後日、明日香は自分の気持ちとともに押入れにしまっていたクラリネットを取り出し、久しぶりに音を奏でる。その音色が届いたのか、遥斗は目を覚ますが、病室に駆けつけた明日香のことを覚えていなかった。次々と試練が襲いかかる明日香と遥斗の恋はどこに着地するのか。宮辺紗衣(夏子)という遥斗と過去に何らかの関わりがありそうな看護師の存在も気になるところだ。

(文=苫とり子)

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