【タイ】D—MAXの生産現場公開[車両] いすゞ、BEVモデルも生産へ

IMCTのサムロン工場入り口=3月27日、タイ・サムットプラカン(NNA撮影、以下同じ)

2025年以降の適切な時期にピックアップトラック「D—MAX」のバッテリー式電気自動車(BEV)モデルをタイ市場に投入するいすゞ自動車。同社のタイ法人泰国いすゞ自動車(IMCT)はこのほど、D—MAXを生産している首都バンコク東郊サムットプラカン県のサムロン工場を日系メディアに公開した。工場関係者から聞いた内容や生産現場の様子を伝える。

サムロン工場は、バンコクから東に15キロの距離に位置する。さらに80キロ行けば、第2工場としての位置づけであるゲートウェイ工場(チャチュンサオ県)がある。

サムロン工場とゲートウェイ工場の敷地面積は、それぞれ26万4,831平方メートル、70万3,522平方メートル。

サムロン工場ではD—MAXのほか、7人乗りのピックアップパッセンジャービークル(PPV)「MU—X」の全量、ゲートウェイ工場ではD—MAXの一部のモデルとトラックの生産を、それぞれ手がけている。2002年に、それまで日本で行ってきた輸出向けピックアップトラックの生産もタイに完全移管。タイ工場は、輸入などで調達した車両部品を完成車に組み立てるインドと南アフリカの「ノックダウン」生産拠点に対しても技術的なサポートを行うなど、いすゞグループのピックアップトラックのマザー工場としての役割を果たしている。

ピックアップトラックは1999年にオーストラリア向けを皮切りに輸出を開始して以降、漸次仕向け地を拡大。現在は、D—MAXは世界120カ国、MU—Xは主にオーストラリアやフィリピンに、レムチャバン港(東部チョンブリ県)からそれぞれ輸出される。2023年度のD—MAXとMU—Xのグローバル販売台数は41万7,000台。内訳はタイ国内が20万2,000台、輸出が21万5,000台となっている。

1966年の生産開始から57年後の2023年にはタイでの車両生産台数が累計600万台に達した。サムロン工場では、マツダのピックアップトラック「BT—50」のOEM(相手先ブランドによる生産)も行っている。

■溶接の自動化率は100%

100%自動化の溶接工程

サムロン工場で記者たちを出迎えてくれたのは二宮宏工場長。二宮工場長は1988年にいすゞに入社。タイ駐在は2年目だ。サムロン工場の生産能力はD—MAXが20万台、MU—Xが5万台。自動車は(1)プレス(2)溶接(3)塗装(4)フレーム組み立て(5)車両組み立て(6)最終検査——という6つの工程を経て製造される。サムロン工場では、プレス工程で1枚の鋼板をカットしてプレス機で成型することで車体の骨格となる6つのモジュールパーツを1つに形作る溶接工程が公開された。

溶接工程はロボットとの相性がよく、4年前に自動化100%を達成した。ミリ単位でズレが生じても、ドアが閉まらなかったり、車内に雨漏りしたりする原因となるという。

反転してラインに投入されるシャシー

組み立てでは、シャシーが「反転」した形でラインに投入されている。サスペンション、ステアリング、ブレーキ、タイヤ、ホイールなどの足まわりの部品を取り付けやすくするためだ。

正転したシャシー

シャシーはその後180度「正転」させて、エンジンやトランスミッションなどを搭載する。部品はフィリピンから輸入しているトランスミッションなどを除けば現地調達率は90%に達する。建屋の2階で生産したキャビンを上から降ろしてシャシーとドッキング。

キャビンとシャシーのドッキング

その後、最終検査を経て出荷となる。

最終検査を終えた車両

工場はD—MAXとMU—Xの混流生産を行っている。D—MAXも、◇最もスタンダードなシングルキャブ「レギュラーキャブ」◇フロントシート後ろのスペースを拡大して観音開きドアを与えたエクステンドキャブ「スペースキャブ」◇後席付の5人乗車が可能なダブルキャブ「クルーキャブ」——の3種類のキャビンがあり、レーンの幅に違いがある。レーンの幅を自動調節することで間断のないキャビンの流れを実現した。

いすゞは2024年1月、新型D—MAXのスポーツタイプ「X—Series」を発売した。外観と内装をスポーティーに刷新。中・高所得レベルの若者を含めいすゞファンの拡大を狙う。

サムロン工場では今後、専用組み立てラインを設けてD—MAXのBEVモデルを生産する計画。その後は既存のラインを使った混流生産や第2工場であるゲートウェイ工場での生産も検討していくという。

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