〈関越道バス事故12年〉紗知と一緒に楽しめた 富山で追悼ライブ

ライブの後、宮下紗知さんの写真と一緒に記念写真を撮る恵子さん(後列左端)と友人=富山市内のライブハウス

  ●ボーカル中江川さん「心込めて歌います」

  ●母・宮下恵子さんら「喜んでくれた」 

 群馬県藤岡市の関越自動車道で2012年に起きた高速ツアーバス事故の発生から12年となった29日、犠牲になった高岡市の宮下紗知さん=当時(19)=がファンだったバンド「FiVe(ファイブ)」が1日限定で再結成し、富山市内で追悼のライブを行った。「紗知と一緒に楽しめた」。紗知さんの写真を持って行った母恵子さん(63)は在りし日に思いを寄せた。

 「心を込めて歌います」。恵子さんはファイブのボーカル中江川力也さん(40)からメッセージをもらいライブに招待された。すぐに自宅の仏壇に手を合わせ紗知さんに報告した。

 ライブには全国各地から220人が集まり、バラードやロックなど全21曲で盛り上がった。約3時間のステージが終わり、恵子さんは「紗知は私たち家族や友人の心の中に生きている。きっと喜んでくれたと思う」と笑顔で話した。

 恵子さんは29日、家族と紗知さんの友人ら10人で事故現場を訪れ、そのまま富山市常盤町のライブハウス「ソウルパワー」へ向かった。中江川さんの正面に立ち、手を挙げたり、一緒に歌を口ずさんだりして楽しんだ。ライブ後は紗知さんの写真と一緒に全員で記念撮影した。

 高校生の頃からファイブのファンだった紗知さん。中江川さんは事故後、毎年のように命日に合わせて家族や友人と交流を続けている。「とにかくみんなに楽しんでもらいたかった。これからも紗知さんに思いを寄せ続けていく」と話した。30日は高岡市内の紗知さんの墓に手を合わせてから東京に戻る。

 ★関越道ツアーバス事故 2012年4月29日未明、群馬県藤岡市の関越自動車道でバス会社「陸援隊」の高速ツアーバスが防音壁に衝突し、乗客7人が死亡、38人が重軽傷を負った。前日夜に金沢市を出発、高岡市を経由して千葉県に向かっていた。男性運転手は自動車運転過失致死傷罪などに問われ、前橋地裁は14年3月の判決で「眠気を感じながら運転を続けた」と認定、懲役9年6月、罰金200万円の刑が確定した。

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