昨年2回戦敗退の悔しさ糧に成長 23歳の柔道全日本王者がパリオリンピック代表の同世代に宣戦布告「どんどん挑んでいく」

初優勝を果たし天皇杯を手にガッツポーズの中野(撮影・冨永豊)

◆柔道 全日本選手権(29日、日本武道館)
体重無差別で日本一を争う大会で、23歳の中野寛太(旭化成)が初優勝を飾った。決勝では東京五輪男子100キロ超級代表の原沢久喜(長府工産)を判定で破った。 昨年大会を制し、今回は史上単独3位となる5度目の頂点を狙った王子谷剛志(旭化成)は準決勝で中野に屈した。

耐え抜いて悲願の天皇杯を手にした。6度目の挑戦で日本一に輝いた23歳の中野は「初戦からずっと厳しい闘いで判定や優勢勝ちが続いたけど、集中して、執念を持って、我慢を心に置いて闘った。きょう一日よく我慢できた」とうなずいた。

決勝は東京五輪100キロ超級代表の原沢。長身の相手に押さえつけられないよう意識し、組み手争いで優位に立ち、主導権を握らせなかった。

決め手は欠いたものの、序盤に効果的に技を繰り出し、旗判定は2―1。「内容は悪かったが、勝ち切れた」と実感を込めた。

同じ旭化成で連覇を狙った王子谷との準決勝は小外刈りで36秒の勝利。その先輩が制した1年前の前回大会、2回戦負けの悔しさが糧となったという。「自分の弱さと向き合い、優勝することだけを考え生活してきた」

生活を抜本的に改善した。5時間程度だった睡眠時間を8、9時間に増やして食事面でも自炊して気を配った。「夜中とか携帯電話を触りたくもなるけど、優勝したいと思えば置ける。料理も頑張れる。それを1年継続できた」と胸を張った。

4月上旬の全日本選抜体重別選手権で1回戦敗退を喫したが、その後、拠点とする天理大で穴井隆将監督に1週間「マンツーマン」で指導を受けた。「一番しんどい稽古だったと思う」。苦しい稽古だったが改善した生活で培った身体で耐え抜いた。

重量級のホープとして期待されながら、100キロ超級はジュニア時代からの好敵手でパリ五輪代表の斉藤立が先行。「パリが終わればロサンゼルスの選考も始まる。(斉藤に)どんどん挑んでいく」。4年後へ日本一を弾みとする。
(山田孝人)

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