【社説】衆院3補選立民全勝 政治とカネ、解決できねば

 おととい投開票された衆院3補欠選挙はいずれも立憲民主党が勝利を収めた。派閥の政治資金パーティー裏金事件という自民党への大逆風に乗じ、政権批判票を幅広く取り込んで圧勝した形だ。

 とりわけ自民党がこれまで一度も敗れていなかった島根1区で、元職の亀井亜紀子氏が自民党新人を下した意義は大きい。亀井氏が「保守王国といわれる島根県での今回の結果は、大きなメッセージとなって岸田政権に届く」と述べたのもうなずける。

 ただ、勝利は自民党の自滅によるものだ。3補選の結果を喜んだところで、与党が圧倒的多数を握る国政の現状が変わるわけではない。政治とカネの問題に後ろ向きな自民党をただすには、野党間の連携も必要になる。正念場はむしろこれからである。

 泉健太代表は、選挙結果を受け「自民が政治改革に本気で取り組まないなら、衆院解散すべきだ」と力を込めた。自民党に政治改革を迫り、今国会会期末での内閣不信任案提出をちらつかせてもいる。

 国民の注目が政治とカネの問題の解決に集まったのが、今回の結果という判断なのだろう。3補選とも投票終了と同時に当選確実が伝えられるという強烈な追い風を受け、意気が上がる泉代表の気持ちは分からないでもない。国会で今後、政治とカネの問題を厳しく追及してもらいたい。

 しかしながら、次期総選挙を見渡せば党の現状は心もとない。小選挙区で目標とする200人擁立も人選が進まず、裏金が指摘された自民党議員の選挙区も候補者が内定していないところが目立つ。

 泉代表はこれまで補選で勝利したことがなかった。単独で政権交代を目指すのは現実的でないと考えたのかもしれないが、党の活動方針が「自民党を超える第1党となる議席の確保を全力で追求する」という表現はいささか物足りない。与党に解散総選挙を求めるのならば、国民にもっと政権交代の選択肢を明確に示すべきだろう。

 自民、公明両党による連立政権は10年以上続いている。裏金事件に代表されるおごりや緩み、強引な国会運営を許してきたのは、足並みのそろわない野党の非力さにも原因があるはずだ。

 ところが、日本維新の会の馬場伸幸代表は「立憲民主党をたたきつぶす」という発言をした。国民民主党の玉木雄一郎代表も共闘には否定的な考えを示している。

 泉代表は「まず裏金一掃・政治改革救国内閣を目指す」とし、一致できる政策を絞って連立を組む「ミッション型内閣」を呼びかけている。どこまで野党が歩み寄って連携ができるか、立民の調整力が問われることになろう。

 低い投票率も気にかかる。与野党対決だった島根1区は54・62%、東京15区は40・70%、長崎3区は35・45%でいずれも過去最低だった。

 政治への不満が高まっている中、これだけ多くの有権者が投票しない現状は見過ごせない。次期総選挙に向けて、国民の投票意識を高めることにも取り組んでほしい。

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