春の登山「デビュー」&「足ならし」に! 往復3時間以内で登れる「絶景の山頂&展望スポット」5選

歩きやすい登山道から「竜ヶ岳」を望む(撮影:山好 せいじ)

厳しい寒さも和らぎ、外遊びに適した季節がやってきた。GWの家族旅行や、友人との行楽地選びに頭を悩ませている方も多いことだろう。そこで、心地よい春の爽やかな陽気を、山歩きで満喫してみてはいかがだろうか。もちろん、日頃の運動不足解消にももってこいだ。

本稿では、都心からのアクセスに優れているうえ、登山初心者でも安心して登れる3つの条件を満たした山を5つ紹介したい。

■ビギナーでも安心して登れる3つの条件

【登山道が整備されていて、案内表示が豊富】

初心者でも道迷いの可能性が低く、案内表示のしっかりした山であること。整備が行き届いていて歩きやすい登山道がある。なおかつ、ハイカーからの人気が高く、トラブルがあった場合でもすぐに助けを呼ぶことができる。これらの条件を満たした山を厳選した。

【登山口と山頂の往復3時間目安】

体力面と精神面を考慮して長時間の行動にならないよう3時間までとした。歩行スピードに個人差はあるが、行動時間の目安を知ることは自身の体力と照らし合わせたペース配分にも役立つはずだ。

【標高差が400m未満のコース】

一般的には標高差が600m以下のコースを「初心者向け」とするが、今回は400m未満(85〜373m)のコースを紹介。

■天覧山(埼玉県飯能市)登山口から山頂までわずか20分のお手軽低山

標高:195m
標高差:85m
歩行距離:1.1km
ルート時間:90分

埼玉県飯能市にある「天覧山(てんらんざん)」は、標高195mだが頂上の展望台からは飯能市街を一望できる。山頂を一直線に目指すのも良いが、アニメ「ヤマノススメ」の舞台となった飯能駅前の「飯能銀座商店街」や、白い象の像が鎮座する「観音寺」、人気のキャンプ地である「飯能河原」など道中に見どころが多く、飯能の街並みを楽しみながらの散策がおすすめ。

飯能駅から登山口のある能仁寺(のうにんじ)まで徒歩約30分。この区間には市営バスも運行している。能仁寺から山頂までの距離は約700m、15分ほどの道のりだ。

マイカー利用の場合は、飯能中央公園に無料駐車場があるが、隣接する飯能市市民会館で催し物がある際は利用者専用となることもあり、事前の確認が必要。子どもからお年寄りまで登れるように整備された登山道なので、初心者も安心して登頂できる。

■仙元山(神奈川県葉山町)登山口から30分で相模湾と富士山が見られる山頂へ

標高:118m
標高差120m
歩行距離:1.2km
ルート時間:50分

神奈川県葉山町(はやままち)にある仙元山(せんげんやま)は、三浦半島の西側に位置する三浦アルプスの一角。標高は118mだが、山頂からは相模湾(さがみわん)や江ノ島が一望でき、好天時には富士山を見ることができる。

仙元山登山口のある葉山教会は、逗子駅からバスで約15分、風早橋(かぜはやばし)バス停下車後、徒歩5分で到着する。森戸海岸(もりとかいがん)からの潮風を感じながらハイキングコースの看板に沿って歩こう。

登山口からは整備の行き届いた階段を中心とする登山道が続くので、初心者でも安心だ。約30分で到着する山頂は広々としており、ベンチやテーブルも備わっている。眼前に広がる葉山の街並み、相模湾に浮かぶ江ノ島と富士山を眺めながらの山ごはんは、おいしさもひとしおである。

■八重山(山梨県上野原市)地域ぐるみで守られている学びの里山

標高:530m
標高差:322m
歩行距離:3.9km
ルート時間:120分

山梨県上野原市にある、八重山(やえやま)は、地域ボランティアや隣接する中学校の学生の環境保全活動により、多種多様な植生を見ることができる。

登山口から先は草花の丁寧な説明がされた看板を読みながらなだらかな一本道を30分ほど進むと分岐が現れる。どちらのコースを選んでも20分進んだ先の展望台で合流するので、行きと帰りで使い分けると良いだろう。

途中、景観が自慢の展望台で富士山や道志(どうし)山系の景色を堪能したら、いよいよ山頂だ。展望台から山頂まではおよそ15分。山頂には東屋もあるので、しっかり休息を取ってから下山しよう。付近には秋山温泉や、一般道から談合坂SA(上り)に入れる「ぷらっとパーク」があり、下山後に楽しめるスポットがあるのも魅力だ。

八重山登山口へはマイカーの場合10台ほどのスペースがある無料駐車場とトイレが備わっており、中央自動車道・上野原ICから約15分。電車とバスの公共交通機関利用の際は、 中央線上野原駅より富士急山梨バスを利用して、大堀(おおほり)バス停で下車し徒歩約20分。バス停付近にはドラッグストアがある。

■足和田山(山梨県富士河口湖町・鳴沢村)登山口の標高が1,000m超! 富士五湖の中央に位置する山梨百名山

標高:1,354m
標高差:373m
歩行距離:6.2km
ルート時間:170分

足和田山(あしわだやま)は、山梨県富士河口湖町と鳴沢村(なるさわむら)にまたがる標高1,354mの山で、山梨百名山に選定されている。山頂が富士五湖の中心に位置することから、五湖台(ごこだい)とも呼ばれており、河口湖、西湖、本栖湖を見渡すことができる。

登山口(紅葉台展望レストハウス)から三湖台(さんこだい)までは約20分、緩やかな尾根道が中心なので、初心者にも歩きやすい。三湖台から足和田山山頂(五湖台)までは約1時間。時折り視界が開け、富士山が望め、期待が膨らむ。そして山頂(五湖台)には圧巻の展望が待つ。

歩行距離、行動時間ともにこれまで紹介した3座と比べて長いので、経験者との同行が望ましい。また、標高差に加えて気温差も大きいため、防寒着を忘れずに持っていこう。

登山口となる紅葉台展望レストハウスの標高がすでに1,000m近くあり、中央自動車道・河口湖ICから登山口までは20分ほどだ。30台ほど駐車可能な駐車場とトイレが備わっている。ただし、レストハウス手前は未舗装の道路なので、安全な速度で運転してほしい。

■竜ヶ岳 ※見晴台まで(富士河口湖町・身延町)樹海や子抱き富士が見られる圧巻大パノラマの山

見晴台付近の標高:1,233m
累積標高差:348m
歩行距離:4.4km
行動時間:170分

竜ヶ岳(りゅうがたけ)は、山梨県南巨摩郡身延町(みなみこまぐん みのぶちょう)と富士河口湖町の境に位置する。年末年始にはダイヤモンド富士が見られる山としてハイカーから人気を集めている。なだらかで歩きやすく標識も豊富なため、初心者でも安心して登れる、富士山西麓を代表する山である。

竜ヶ岳の標高は1,485mだが、山頂を目指すだけが登山の楽しみではない。高山植物やその山に住む動物との出会いも登山の魅力の一つ。そこでこの竜ヶ岳においては、山頂の絶景にも負けない素晴らしい景色が見られる、山の中腹にある「見晴台」を目的地とした。登山口から「見晴台」までは2.5km、約100分の道のりだ。

「見晴台」からは、左に富士山、右に北岳を筆頭とする南アルプスが見られるほか、富士山の裾野に広がる青々と茂った富士の樹海や、手前の大室山(おおむろやま)を抱いたように見える「子抱き富士」を見ることができる。

中央自動車道・河口湖ICから30分ほどの、本栖湖キャンプ場の無料駐車場から中腹の「見晴台」往復なら初心者でも安心して楽しめるはず。

■まとめと注意

ここで紹介した5座は危険箇所も少なく、行動時間も短いので登山入門としては最適だろう。これらはもちろん、筆者自身が実際に登って体験したことをベースに選定させていただいた。

とはいえ山では、いっときの油断が大きなケガにつながることを忘れてはならない。防寒対策・お弁当(行動食や非常食)・水分・帽子や虫除けなど、必要なものの情報収集と準備にはしっかり時間をかけよう。万全を期してもなお、体調や天候に不安がある時は無理をしないでほしい。

あなたの楽しみにしている登山が、良い天候と素晴らしい景色に恵まれることを願っている。

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