タティスJr.と遊撃争うも…投手転向で即メジャー 阪神助っ人は“異色の経歴”

阪神のハビー・ゲラ【写真:荒川祐史】

新井宏昌氏は2017年の秋、2018年の春のキャンプでパドレス時代のゲラを指導

今シーズン、首位に立つ阪神を支えているのが、岩崎と共にWストッパーとして君臨する新助っ人のハビー・ゲラ投手だ。ここまで14試合に登板し0勝1敗、7ホールド5セーブ、防御率1.29を記録。パドレス時代に臨時コーチを務め“野手・ゲラ”を指導した野球評論家・新井宏昌氏は「真面目に練習に取り組む姿勢は素晴らしく、肩の強さは光るものがあった」と、当時を振り返った。

新井氏はパドレスのアドバイザーを務める野茂英雄氏からの誘いを受け、2017年の秋季キャンプ、2018年の春季キャンプで臨時コーチを務めた。主な目的は当時、遊撃手だったゲラの打撃指導。A.J.プレラーGM(当時)からも「チームで期待している選手の1人。打撃を何とかしてほしい」と依頼を受けたという。

チーム内には後に本塁打王、シルバースラッガー賞、ゴールドグラブ賞などを手にする、大型野手のタティスJr.が在籍。ゲラと共にマイナーで遊撃争いを繰り広げており、新井氏も「身体能力の高さはタティスJr.でしたが、守備面ではゲラの方が評価は高かった」と、振り返る。

指導のなかで求められたのは逆方向への打撃。メジャーでは長距離タイプではないが、引っ張り癖があり、タイミングの取り方にも難があったという。オリックス時代のイチローを指導した日本人コーチが、身振り手振りで指導する姿にゲラも真剣なまなざしで耳を傾け、バットを振り続けた。

“意識改革”もあり練習試合では逆方向への安打も増え、野茂氏からも「いい形でヒットが出るようになりました」と感謝された。2018年シーズンにはメジャー昇格を果たし安打も記録したが、2019年にはタティスJr.がブレークしたこともあり投手に転向。「肩の強さは素晴らしかったが、すぐに通用するとは思わなかった」と、新井氏も驚く転向1年目でのメジャー初昇格を果たした。

これまでコーチとして数々のスター選手を見てきた新井氏のなかでも、思い出に残る選手の1人。阪神で活躍する姿に「岡田監督も状況を見つつ、岩崎と共に上手い起用の仕方をしている。まだシーズンは始まったばかりですが、日本で成功してほしい」とエールを送る。

球団史上初の連覇に向け、新助っ人の活躍は必要不可欠。野手から投手に転向した異色の経歴を持つ背番号「00」が、ピースの一つになることを願っている。(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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