「恥ずかしかった」息子に「一緒に乗るのが夢」な父が猛アタック 曽祖父が復元した爬竜船で「優勝目指す」 家族4代で継ぐ那覇ハーリー

爬龍船を家族4代で受け継いでいる(左から)安次富長太さんと父の史さん、祖父の長勇さん=28日、那覇市・泊北岸(喜屋武綾菜撮影)

 今年で50回目の節目を迎える「那覇ハーリー」の目玉「本バーリー」に、泊チームの旗振り役として那覇市立松島中学校2年の安次富長太さん(13)が初めて挑む。曽祖父に当たる泊出身の長達さん(故人)は、いったん途絶えた那覇ハーリーが1975年に復活した際、爬龍船を建造した船大工。以来、家族4代でハーリーに出場し、伝統行事に懸けた長達さんの思いを継承している。長太さんは「優勝を目指して頑張りたい」と意気込む。(社会部・玉城日向子)

 那覇ハーリーは琉球王朝時代に国家行事として栄えたが、1879年の廃藩置県で廃止。1975年の沖縄海洋博覧会を機に復活した。

 長達さんは、泊最後の船大工として活躍した。ハーリー祭りの復活を前に、泊、那覇、久米の爬龍船3隻を復元。その船は半世紀がたった今も、那覇ハーリーで疾走している。

 安次富さん一家は、長達さんが建造した船をこぎ手として家族で長年受け継いできた。長太さんの父史(ちかし)さん(47)も、中学1年の頃から35年以上乗船。今年も本バーリーにかじ取りとして出場し、長太さんを支えるつもりだ。

 毎年欠かさず会場で史さんを応援してきた長太さんは「自分も乗ってみたい気持ちはあったけど、大人ばっかりで恥ずかしかった」と苦笑いを浮かべる。だが、史さんの猛アタックと母千尋さん(46)の説得で、中学校対抗ハーリーへの参加をきっかけに乗船を決めた。

 4月に入り、中学校チームと本バーリーの両方の練習に取り組む忙しい日々を送る。「思ったより波がきつくてまだ慣れない。だけど楽しくて、まだまだ続けたい」と笑顔を浮かべた。

 史さんは「息子と一緒に乗るのが夢で、やっとかなった」と親子での出場をかみ締める。船を造る長達さんの写真を懐かしそうに眺めながら「いずれ次男や三男も一緒に乗船できればうれしい。子どもたちが引き継いでいってほしい」と語った。

 那覇ハーリーは5月3~5日、那覇市の那覇港新港ふ頭で。本バーリーは最終日の5日に行われる。

爬龍船を復元する安次富長達さん=1970年代、那覇市内(安次富史さん提供)

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