【4月30日付編集日記】ランドセル選び

 環境汚染の実態を世に告発したことで知られる米国の海洋生物学者で作家のレイチェル・カーソンは遺作「センス・オブ・ワンダー」で、めいの息子と海岸や森で過ごした日々を描いている。自らの経験を基にして、幼い子どもが自然と触れ合う意義をつづった

 ▼子どもは「神秘さや不思議さに目を見張る感性」を生まれつき備えており、感動を分かち合うことが大人の役割だとする。自然の風景や植物の形態などが見せる美しさに触れる中で趣味嗜好(しこう)が形作られていくのだろう

 ▼来春、小学校に入学する新入生向けのランドセルの販売会が各地で開かれている。ランドセル選びは、子どもが自らの好みに従って重要な判断を下す人生で初めての機会といえる

 ▼黒と赤だけだった数十年前とは違い今はさまざまな色が用意されている。途中で色に飽きずに6年間使い続けるためには、子ども自身に「選んだのは自分」と明確に認識してもらうことが大切だ

 ▼選ぶ色は晴れ渡った空の水色か、野に咲くスミレの紫色か、あるいは人気アニメのキャラクターのイメージカラーなのか。何色を選ぶにせよ、子どもがそれまでの人生で培った感性を駆使して行う大きな選択を、大人は静かに見守ろう。

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