【新紙幣】金融教育充実の機会に(4月30日)

 新しい紙幣の発行まで、来月3日で2カ月となる。千円札は、本県が生んだ医聖・野口英世からデザインが変わるが、日銀福島支店が開いた見学会は申し込みが定員に達するなど、県民の高い関心を集めている。20年ぶりの紙幣刷新を機に、子どもが金銭感覚を身に付ける金融教育を一層充実させてほしい。

 新紙幣は、1万円札が日本の資本主義の礎を築いた渋沢栄一、5千円札は女子教育の先駆けである津田梅子、千円札が細菌学者の北里柴三郎の肖像となり、7月3日に発行される。産業や感染症対策をはじめとした医療の発展、女性活躍の推進を実現する上でも意義深い起用となった。今年度末までに計74億8千万枚が製造される予定で、県内でも日銀福島支店から銀行、信用金庫を通じて市中に順次、供給される。

 福島支店は春休み期間中に2回、お札見学会を開いた。25人の定員枠は、いずれも親子連れらで埋まったという。新紙幣には粋を極めた3Dホログラム、「すかし」の偽造防止対策が施されており、最先端の技術力に国民の高い関心が寄せられている。新たな小額投資非課税制度(NISA)が今年1月に始まり、3月には日銀がマイナス金利政策を解除した。投資や金利など「お金」に対する関心は高まりを見せている。金融商品の安全性や金融政策の仕組みを丁寧に伝える金融教育の機会を、さらに増やすべきだとの声も聞かれる。

 日銀福島支店と同支店が事務局を務める県金融広報委員会は現在、学校や地域の公民館で一般向け金融講座を開き、紙幣の知識や生活設計の手法などを教えている。今後は本県産業の特性をはじめ、暮らしを左右する為替の仕組みから国の財政まで分かりやすく解説するなど、時代に即した内容を目指してもらいたい。県内の経営者らを講師に招けば、生きた経済を学ぶ貴重な機会となるだろう。

 国内のキャッシュレス決済の比率は年々高まり、2023(令和5)年は4割近くに達したが、紙幣の需要は根強い。デジタル決済は観念的空間での取引で、「子どもが金銭感覚を身に付けにくい」との指摘もある。幼いうちから、お札を通じて正しい金融知識を身に付ける重要性は増している。(菅野龍太)

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