アブラムシの駆除促進へ 茨城大が新技術 虫の成長段階をAIで自動判別

茨城大農学部の研究チームが開発したエンドウヒゲナガアブラムシの齢期を判別する画像診断ツール(同大提供)

茨城大農学部の研究チームが、人工知能(AI)を活用してアブラムシの成長段階を判別する画像診断ツールを開発した。アブラムシは農作物などに被害を与える害虫として知られる。開発したツールは、さまざまな成長段階のアブラムシを、効率よく集めることに役立つ。農薬の効果を確かめる実験など、駆除に向けた活用が見込まれている。

このツールでは、一般的なアブラムシ「エンドウヒゲナガアブラムシ」の姿を中心に、AIに学習させた。さらに白色光や自然光などさまざまな光条件のアブラムシの画像を、異なる撮影倍率でも高い精度で判別できるよう調整した。

利用方法は、拡大レンズを装着したスマートフォンなどでアブラムシを撮影し、画像をツールにアップロードする。するとツールが自動的に判別したアブラムシの成長段階を数字などで表示してくれる。

アブラムシは新芽や葉裏に集まり植物の汁を吸う、吸汁性害虫。また、植物の間でウイルスを媒介し、世界的に深刻な被害をもたらしている。駆除には農薬が効果的な半面、若いアブラムシは農薬に対する解毒酵素遺伝子が働くとされ、農薬が効きにくくなる。

開発したツールを用いると、特定の成長段階ごとのアブラムシをそれぞれ効率よく集めることができる。これまで、アブラムシを成長段階別に集めるには、基本的に1匹ずつ飼育して脱皮の回数を数えるしかなく、多くの時間が必要だった。ツールの開発により、各成長段階での農薬の効果を確かめる実験などで、大幅な時間短縮が見込める。

開発を主導した同学部の菊田真吾准教授は「今後はより多くのアブラムシの種類を判別できるように改良していきたい」とし、「被害の減少に貢献できればうれしい」と話している。

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