手堅いアクションと“究極のお人形遊び”の融合 美少女ソウルライク『Stellar Blade』先行レビュー

4月26日に発売される『Stellar Blade』。今回はSIEのコード提供により、本作を一足早く遊ぶ機会を得た。約35時間を費やし、エンディングまでを通してプレイしたなかで得た感想をここに記載させていただく。

■新人類とネイティブの終わりなき戦い……『Stellar Blade』概要

本作は『勝利の女神:NIKKE』を手掛けるSHIFT UPが送るセミオープンワールド型のアクションRPGだ。同開発の代表を務めるキム・ヒョンテ氏がディレクターを担当していることもあり、ハードな世界観と、とんでもなくセクシーなビジュアルのキャラクターが特徴である。

舞台は遠未来の地球。謎の生物「ネイティブ」によって地上から宇宙コロニーへと追いやられた人間たちは、体のほとんどを機械化することによって、宇宙空間でも生き延びられるほどの進化を遂げていた。ネイティブの駆逐を目的とする軍隊に所属する主人公イヴは、地上に降り立ち、ザイオンという集落に身を寄せる。彼女がネイティブを狩り続けるなかで、隠されてきた歴史が徐々に明らかになっていく……といったストーリーである。

ゲームの作り自体はシンプルな一本道であり、地上の生き残りが暮らす平和な街ザイオンと、アルファネイティブというボスモンスターが巣食うダンジョンを行き来するだけだ。そこに至るまでの道中に「荒野」などのセミオープンワールドがあり、ザイオンで受注したクエストをこなすことで、強化アイテムや資金などが手に入り、少し冒険が楽になるという仕様だ。

よくあるPSファーストタイトルの流れを踏襲しており、家庭用ゲームを日頃から遊ぶ人ならなにも躓くことはないだろう。難易度もノーマルとストーリー(イージー)の2種類があり、高難易度を志向しているとともにちゃんと間口も広いと感じた。一部、ダンジョン内のパズルで頭を捻ることもあるが、多くのプレイヤーが問題なく遊べるはずだ。

■セクシー系からkawaiiまで……美しく舞うイヴを眺める 衣装、髪型、肌へのこだわりを感じろ

なにはともあれ、本作が注目されている理由は間違いなく主人公のビジュアルだろう。

同開発の『勝利の女神:NIKKE』同様、キャラクターの引き締まった臀部がずっと映りっぱなしとなっている本作は、ビデオゲームに多少のエロスを求める層を惹き付けてやまない。ギリギリ下品とも言えるくらいの攻めた表現の数々に、筆者は当初半笑いで受け止めていたが、そのうち真顔になり、無言でキワどいスクリーンショットを撮り続けるようになっていった。いや、だって、あまりにもセクシーなので……。

そんなイヴをもっと愛でてほしいという開発からのメッセージは、外見という項目に表れている。クエスト報酬、ショップ販売、ダンジョンの宝箱などあらゆる場面で、イヴの新衣装が手に入る。

体のラインがよく見えるぴっちりとしたボディスーツから、フリフリのスカートが可愛いウェイトレス風のドレスまで、あらゆる嗜好に応えるアイテムが取り揃えられており、ゲームを進める手が止まらなかった。着せ替えて愛でる楽しさこそが、本作の最大の魅力と言っていい。髪型も豊富で、きっと気に入るスタイルが見つかることだろう。

だが、先行プレイの段階ではフォトモードが実装されていなかったので、アップデートで用意してもらえると、さらに喜ばしいと思った。廃墟や荒野といったゲーム内の背景も、テンプレートな表現ではあるがなかなかに美しかったので、それらも込みで写真に収められたらもっと楽しいはずである。

■パリィと回避、そして銃撃を駆使して華麗に戦え 『Stellar Blade』のバトル

本作はいわゆる『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』に代表されるような近接攻撃が主体の3DアクションRPGであり、バトルに重きが置かれている。

タイミングよくL1のガードボタンを押すと「ジャストパリィ」が発動し、また敵の攻撃をギリギリまで引き付けて○ボタンで避けると「ジャスト回避」となる。このあとに生まれた隙に攻撃を叩き込み、敵のHPを一気に削るのが基本となる。「ソウルライク」と総称されるジャンルの王道を往くデザインだ。

くわえて、銃撃もこのゲームの大事なフィーチャーだ。随伴していたドローンを腕に巻き付け、5種類の弾を駆使して敵を蜂の巣にすることができる。

これらの戦闘システムにも多少の綻びはある。後半のボスが繰り出す連撃をすべてパリィするのはなかなかハードなうえ、防御不能攻撃や、遅らせ攻撃も織り交ぜてくる。それらにすべて対応しても、反撃によって得られるリターンは少なく、こちらが華麗に行動して敵を翻弄するというよりも、正解の行動を入力し続けて間違えたら大ダメージを受ける……といった後ろ向きなバトルが増えていくのだ。

とはいっても、エグゾスパインやギアといったビルドを変えればある程度は対応できるし、銃撃を始めとする「敵がノックバックする攻撃」がほぼすべてのボスに通じるのも覚えておくべきポイントだ。

難易度も好きなタイミングで変更できるので、まったく歯が立たないわけではない。『SEKIRO』や『Bloodborne』を初めてプレイしたときの感動には及ばないが、フォロワー作品としては、ほどほどに楽しめるクオリティに仕上がっているという感じであった。

ただ、敵モンスターのデザインには目を見張るものがあった。グロテスクで独創的だが、体のパーツから攻撃手段がひと目でわかるアイコニックさもあり、こだわりとわかりやすさが同居しているものが多く、その点は高く評価すべきだろう。

■地上はいかにして滅んだのか? 平凡な世界観とストーリー

本作でもっとも気になったのは、世界観とストーリーである。

ポストアポカリプスの設定だが、ビジュアルには活かされているものの、お話に絡んでくるかというとそうでもない。唯一の集落であるザイオンは新しく登場した指導者をどう受け取るかで揉めているが、その問題について主人公が深く絡んでいくパートはなかった。同じポストアポカリプスものでも『Fallout』シリーズのような醜い派閥争いや、人間社会の限界を感じ取れるプロットは一切存在しないので、期待するのは止めておこう。

メインストーリーに関しても、公式サイトでは「衝撃のストーリー展開が待ち受けるアクション・アドベンチャー」と書かれているが、プロットに目を見張るツイストはなく、そもそも登場人物が少ないうえに役割が被っている。誰も彼もが無味乾燥で、愛着が沸くような仕草をしたり、気になる秘密を抱えていたりといったこともない。

サブクエストも作り込みが甘い。歌姫の失われた肉体を取り戻すクエストラインを除けば、ほとんどは死体を探しに行って遺留品を回収したり、敵を何体か倒して報酬を貰ったりするくらいで、意外なオチや、面白い会話劇が用意されているといったことはない。ストーリーに感動したい/驚きたいという人には向いていないだろう。

■総評

『Stellar Blade』は、手堅い作りのアクションや美しいビジュアルを楽しめる一作だ。PlayStation 5の性能をしかと感じる流体表現や、韓国語の女性ボーカルが淑やかに歌い上げるBGMは、値段相応の豪華さを感じた。しかしながら、世界観やストーリーについてはもっと作り込む必要があるだろう。

だが、それら欠点をすべて払拭するほど、主人公イヴのモデリングは素晴らしく、あらゆる角度から何時間でも眺めていられるほど美しい造形である。

ある意味ではSIEのパワーを借りて作られた究極のお人形遊びと言ってもいいかもしれない。キム・ヒョンテらが描く次なる美少女は果たしてどこまで行ってしまうのか……!? そんな期待感を煽る一作であった。

(文=各務都心)

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