なぜ辞退しない? 円安物価高の“A級戦犯”黒田東彦・前日銀総裁に「叙勲」のブラックジョーク

底ナシ円安の元凶(「異次元緩和」政策を説明する黒田東彦日銀総裁=2013年当時)/(C)共同通信社

よりによって、である。一時、1ドル=160円を突破するほどの超円安が加速する中で、この事態を招いた“A級戦犯”に勲章が授与される。黒田東彦・前日銀総裁のことである。

政府は29日付で春の叙勲を発表。4108人が受章し、「公務等に長年にわたり従事し、成績を挙げた方」が対象となる瑞宝大綬章の1人が黒田氏だった。本人は「私の勤務した財務省、アジア開発銀行、日本銀行の功績に対する叙勲と考え、感謝いたします」とコメントしたが、このニュースが流れるとSNSは、ほぼブーイング一色。

《アベノミクスで、国債を買いまくって政府の財政ファイナンスを助けて、日本円を棄損させた黒田に、叙勲なんて、この国どうなっているんだ?》《黒田だけは無いよね。むしろ国を混乱させた罰を受けるべき》など、「叙勲に納得いかない」という意見があふれた。

当然だ。底ナシの円安・物価高地獄は黒田氏が10年も続けた異次元緩和の副作用に他ならない。安倍元首相が人気取りで始めたアベノミクスの円安・株高誘導に、黒田日銀が全面協力。2年で終えるはずがズルズル引っ張って、デフレ脱却どころか悪いインフレを招いた。後任の植田総裁は行き過ぎた緩和策の後始末に右往左往でますます円安を招く悪循環。まさに安倍・黒田コンビこそが日本経済と国民生活をメタメタにした張本人である。

罪の意識も反省もゼロ

「戦犯に叙勲とは、ブラックジョーク以外の何ものでもない」と言うのは経済評論家の斎藤満氏だ。こう続ける。

「だから最初は笑っちゃったんです。でも、岸田自民党の体質が現れた結果だと、ある意味、納得しました。国民に奉仕した人ではなく、政府に協力した人に勲章を授与する。黒田さんは自民党政権を支える上で大きな貢献をしましたからね。国民の認識との乖離は大きい。もっとも、岸田首相が国民感覚からズレているから、補選で全敗したのでしょうが」

黒田氏は現在、政策研究大学院大学や京大大学院で教鞭を取り、新たなライフステージを謳歌している。今月1日に米コロンビア大で講演した際は、植田日銀のマイナス金利解除について「正常化の第一歩」だと評価し、「足元の円安は行き過ぎ」とも指摘していたと日経新聞が報じていた。罪の意識も反省もゼロ。能天気にもほどがある。

叙勲には過去に辞退者もいる。最近では、一昨年に参院議員を引退した二之湯智・元国家公安委員長が、「国家公安委員長として、安倍元首相の銃撃死へ責任を感じている」との理由で、昨秋の旭日大綬章受章を辞退している。

勲章の親授式は来月9日に皇居で行われる。まだ間に合う。黒田氏も辞退したらどうか。

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