突然の余命3カ月宣告「めそめそする暇はない」 歌手・大西麻由さん、5月ラストパーティー

「余命3カ月」と宣告を受けた大西さん。昨年、CDデビューを果たしライブも開いていた=2023年12月、東京都渋谷区

 「今、私は最高に幸せな日々を過ごしている。人生に感謝しています」。「遅咲きのシンガー」として昨年CDデビューしたばかりの大西麻由さん(62)=青森県弘前市出身、東京都在住=は3月末、末期の肺がんで「余命3カ月」と医師に告げられた。「もっと生きたい」。悲運を嘆き涙にくれた。だが「めそめそしている暇なんてない」。家族と過ごす時をいとおしみ、今できることに向き合っている。5月6日、東京・銀座で、歌を通じて身内や友人らに感謝と別れを告げるラストパーティーを開く。

 それが前兆だったのか。2019年に受けた声帯ポリープの手術後、息苦しさを感じた。検査の結果、間質性肺炎と判明した。医師いわく「死ぬ病気にかかった」。最高の治療先を、と必死に探して広島大病院の専門医にたどり着き、4カ月に1度は通院してきた。

 経過は悪くなかった。だが東京の病院に切り替えようと考えていた3月上旬の検査だった。

 主治医から出た言葉は「腫瘍ができとる」。

 「えっ、こんなことって…」。残酷な宣告は突然だった。

 東京で受けた精密検査の結果はステージ4。転移が進み、手術しても治る見込みはないと診断された。抗がん剤も「多少(生きる)時間が延びる程度」と説明された。

 「その日は泣きました。3人の子どもたちも」

 39歳で離婚。子どもを連れて弘前から上京後は子育てに追われ、余裕のない日々を過ごした。その後、高齢者や引きこもりの子どもの世話をするボランティア活動で生きる力を取り戻した。歌に人生を見いだしたのは50歳を過ぎてから。小さいながらコンサートも開き、ようやくCDも出した直後である。

 だが大西さんは強かった。以前から自身の死に対し、確固たる信念を持っていた。「死を考えずして、今を鮮やかに生きることはできない」

 いったんは嘆き悲しみながらも再び前を向き、新曲をレコーディングした。遺言や自分の墓、葬儀の手配と「終活」にも奔走する。3人の子どもたちは全力でのサポートを誓った。「泣いても笑っても3カ月は来る。今を生きるということを周りに伝えたい」と話す表情は、あっけらかんとさえしている。

 4月には子どもたちと弘前に帰省し、身内や友人らと花見を楽しんだ。胸や背中の痛みが増し、息切れも気になってきたが幸い食欲はあり「毎日おいしいものを食べています」と言う。

 5月のパーティーはまさに人生の集大成となる。「皆で歌って、踊って、最高の笑顔で『また会いましょう』と、そんな場にしたい。泣いちゃうかもしれない。でもその涙は『出会ってくれてありがとう。幸せだったよ』です」

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