変革を求められる企業広報の効果測定 目標設定が「数値化できない」悩みも

企業や団体の広報業務は、ステークホルダーとの双方向のコミュニケーションを通して、良好な関係性を構築・維持することを目的としている。ステークホルダーは、消費者、株主・投資家、メディア、従業員、取引先、地域、行政など多岐にわたるが、メディアやSNSなどを通して自社情報を発信する業務の比重も高い。

株式会社共同通信社は、企業や団体の広報担当者を対象に、広報活動の現状や今後の課題などについてアンケート調査を23年度末に実施し、国内86社が回答。メディア環境の変化に伴い、情報の流通構造が多様化する中、広報部門に求められる業務は複雑化し、戸惑う担当者も少なくないようだ。また多くの企業が、広報活動の効果測定について、指標が見つからず定量的な評価分析が難しいのが長年の課題と回答している。

一方で、重要達成度指標(KPI)の設定を追加や変更、変更の準備を進めていると回答した企業もあり、広告換算に代わる広報効果測定の指標の導入や、SNSやグローバルなど多角的視点からの効果測定に取り組む動きも進んでいるようだ。アンケート結果は下記の通り。

■23年度、増やした広報業務は?

■広報活動のKPIを行っていますか?

■広報部門で設定している、KPIの設定や指標は?

■KPIへの新たな取り組み(自由回答)

・SNS、モールの指標を追加・ブランド調査や独自アンケート・デジタルシフト(紙媒体からネットへの移行)・オウンドメディアへのアクセス・マーケティングオートメーション(MA)ツールの導入・社内ポータルサイトによるインナー広報の強化・TVCM放映一定期間における認知度、好感度等の調査・プレスリリース単位によるコミュニケーション戦略の立案・主観的な指標から客観的な指標にシフト・情報発信の質に関するKPIの設定・定期的なエンゲージメント調査による効果測定と時期の戦略立案

■KPI設定への課題(自由回答)

・市場状況によってKPIが変化するため、状況分析が難しい・グローバル広報のKPI設定・広報担当者の不足・イベント開催における目標値の設定・オウンドメディアにおける指標の設定が難しい・広告換算値の正確性が不明で数値化が難しい・成果、効果がわかりにくい・定量化しにくい。露出の量は計測できるが、ターゲットへの伝わり方などの質的な要素を評価できる指標が見つからない・社内への情報の浸透・各施策へのリアクション状況は定期的にとっている。ただし、企業グループのイメージの変容が定点観測できていない・広報・IR・販促マーケティングの線引き・他社を参考にしたいが、情報がない

■AIの導入は?

■メディア向けの活動内容は?

■社内広報の専任担当は?

■従業員に対してパーパス(企業理念、ミッション・ビジョン・バリューなど)の浸透度を測っている?

■コーポレートブランド強化の必要性を意識したのは?

■企業ブランドの確立・強化への取り組み、成果・課題など(自由回答)

・コーポレートサイトおよびロゴリニューアル、ロゴ規定の制定・ブランドの基礎の整理およびコーポレートブランドガイドラインの刷新、グローバルで使えるブランドツールやビジュアル類の拡充、WEBやイントラの整備など・ターゲットの変化、事業領域の拡大に伴いリブランディングの実施・TOCをもとに外部の力も借りながら理念体系(ミッション・ビジョン・バリュー)を再検討。コアメンバーの他、常勤職員全員がいる場でこれまでの過程や内容の確認・意見交換をして、1年以上かけて進めている・企業・団体等とのエンゲージメントの実施・さまざまな取り組みをしているが、企業統合、社名変更後のブランドが浸透しない・ブランド認知度・イメージの定量分析・全国にDMの送付、YouTubeやインスタでの発信を実施も、周知することへの難しさを実感・TVCM等を通じたコーポレートメッセージの浸透を図っているが、CMが古くなっている・広報活動に関して、経営陣の理解を得るのが難しい・ブランド力向上のための強化テーマを設定し、広報・広告ともに適切に情報開示・建築分野の技術工法の広報不足。新たなグループとの協業広報・新CMの制作および放映・SNSの定期発信

■ESGといった非財務情報の開示は?

■ESGへの具体的な取り組みは?(自由回答)

・CSRレポートや統合報告書の発行・オウンドメディア、ESGサイトでの公開・サステナビリティ戦略の策定やレポートの作成・広報が主体となった社会貢献活動・公的な国際機関と連携し、実績や事例を開示・編集記事や広告記事の活用、セミナーでの情報発信、他社との連携など・サステナビリティミーティングの開催

■グローバル向けの広報活動は?

■海外向けの広報 課題など(自由回答)

・海外メディアから自社に問い合わせが来ない。・グローバル本社として、担当の海外広報に関する知見が不十分かつ十分なリソースを割けない・ニュース発信の数が乏しい、各地域のSNSを十分に活用できていない・海外メディアからのインタビューや記事化につながった際に対応できる人がいない。・サイトなども多言語対応していない・海外向けに研究分野の発信を強化することで、結果的に海外での評価を高めるための取り組みが課題・海外広報の経験不足、現地事情の把握・人員不足、外国語対応が社内でできていない・露出効果が見えづらい、求められている情報がわからない株式会社共同通信社は、企業・団体の広報担当者を対象とした調査を今後も定期的に実施する予定。

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