インバウンド(訪日客)の人波が青森県に押し寄せている。県内各地の観光地は、これまで多かった中国・台湾系に加え、円安の影響のためか欧米からの来客も目に見えて増えている。ゴールデンウイーク前半最終日の29日、陽気に誘われて多くの日本人も各地に繰り出しにぎわいを見せた。
「Will you marry me?(私と結婚してくれませんか?)」
弘前公園の遅咲きの桜の下。コロンビアから来たサイモン・ルビンスタインさん(34)は恋人のローラ・マルケスさん(32)に思いを伝えた。答えは「イエス」。満面の笑みを浮かべるローラさんの右手薬指には指輪が光る。
「ここの桜を見て、今日申し込もうと決めたんだ。完璧な場所だったし、ここで言わないとチャンスを逃すと思ったから」とルビンスタインさん。世界の中から弘前公園を求婚の場所に選んだ。青森県が、世界有数の観光地と肩を並べて旅先選びのメニューに載っている現実が垣間見えた。
青森県に運ばれてくるのは「幸せ」だけでない。円安が進む中、「海外マネー」は最大の魅力だ。
三沢市の「星野リゾート青森屋」は中国を中心としたインバウンドでにぎわっている。「青森屋は中国でもSNS(交流サイト)で評判。宿泊できてうれしい」。北京から来た何理さん(36)は妻とともに声をそろえて喜んだ。
やはり円安の恩恵は大きい。「買い物しやすくなりとてもお得。かつて『爆買い』という言葉がはやったけど、今回はさらに爆買いできそう」とほくほく顔だ。
ウミネコで知られる八戸市の蕪島。家族で訪れた台湾のチョン・エレンさん(33)も「日本に来てから『高い』と感じたことはない」と言い切る。「蕪嶋神社は海辺の神社という感じでとてもきれい。ビーチも美しい」と感激の面持ちだった。
日本独自の景観に加え、お祭りなどの風俗も外国人の心をつかむ。
青森市の「ねぶたの家 ワ・ラッセ」では、ポーランドから来た家族連れがねぶたばやしを奏でる楽器に触ったり、ハネトを見たりして楽しんだ。アンナ・ジャニカ・ソブカザックさん(30)は「青森の文化を知ることができた。(2歳と4歳の)子どもたちは太鼓が好きだから、楽しめたと思う」とにっこり。
日本での仕事のついでに来県した台湾の葉庭林さん(58)は「初めてねぶたを見たけど、迫力があって面白い。夏にまた来て、祭りに参加したい」と声を弾ませた。