就活中の子どもが「公務員は激務でコスパ悪いから」と、民間企業を受けています。親としては正直“安定した仕事”をしてほしいのですが、考えが古いのでしょうか?

国家公務員の年収は高い?

国家公務員の収入データは人事院が公表している「国家公務員給与等実態調査結果」で確認できます。2023年の調査において平均給与月額は41万2747円(平均年齢42.3歳、平均経験年数20.4年)となっています。

平均給与月額は俸給と地域手当、扶養手当、住居手当などの諸手当の合計額ですが、一般的な残業代にあたる時間外手当は含まれていません。そのため、残業代を含めると金額はさらに上がると思われます。

また、民間の賞与に当たる期末手当と勤勉手当が2023年度は4.5ヶ月分となっており、これを加えて、41万2747円×(12ヶ月+4.5ヶ月)=681万325円となり、年収は約681万円となります。

一方で、民間企業の給与はどのくらいなのでしょうか。国税庁が公表している「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均給与は458万円となっています。正社員は523万円、正社員以外の非正規雇用の場合は201万円となっており、正社員とそれ以外で賃金格差は依然として大きいことが分かります。

残業が多くて激務は本当?

それぞれの給与実態調査をみると「公務員はやはり民間よりも恵まれている」と感じる人もいるかもしれません。
確かに金額だけみると民間企業の会社員よりも公務員のほうが収入は高いケースもあるでしょう。ただし、中央省庁の官僚が話題に挙がることが多いですが、残業時間の多さが問題となることもあります。

株式会社ワーク・ライフバランスが発表した「コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査」では「残業時間はテレワークを含めて厳密に全部付け、残業手当を全額支払う」ように言われても約30%は残業代を正しく支払われていないと回答するなど、サービス残業がなくならない状況が浮き彫りとなっています。

勤務時間の実態は職場によって異なるため一概にはいえませんが、残業代の不払いによって4割以上がモチベーションの低下を感じ、3割近くが転職を検討する状況をみると、働き方改革が声高に叫ばれても激務である状況はあまり変わっていないのかもしれません。

公務員はコスパが悪いのか

公務員はそもそも目指す時点でハードルが高いという意見もあります。

キャリア組といわれる総合職に採用されるためには、第1次試験、第2次試験として小論文などの筆記や面接、政策課題討議などを通過して、まずは採用試験に合格する必要があります。そのうえで官庁訪問をして面接などを行い、採用内定をもらわなければなりません。

やっとの思いで採用されても長時間労働や残業代の未払いなどの問題が待ち受けている可能性があると考えると、いくら表面的な収入が高くても勤務環境と照らし合わせるとコストパフォマンスが悪いと判断する人がいても不思議ではありません。

まとめ

本記事では「安定した仕事をしてほしい」と子どもに公務員の仕事を勧めることはやめたほうがいいのか解説しました。

考え方や価値観は人それぞれですし、変化が激しい世の中において、公務員も民間企業の会社員も含めて「ここに入れば勝ち組」といった場所は存在しません。どちらが良いといったものはありませんが「公務員は安定しているから」といった理由だけで判断すると、入職後に大きなミスマッチを引き起こす可能性もあるので要注意です。

出典

人事院 令和5年国家公務員給与等実態調査 報告書
国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査-調査結果報告-
株式会社ワーク・ライフバランス コロナ禍における中央省庁の残業代支払い実態調査

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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