発達脳科学者が「子どもにコレがあると最強」と断言するたった1つのこと

本当の「育脳」とは何か。小児科医で発達脳科学者の成田奈緒子先生に、子どもが強く、たくましく生きていくために必要なことを教えてもらいました。

信頼を形作るために、子どもに役割分担を

今は掃除、洗濯、炊事、家庭生活のあらゆることを、主にお母さんだけが必死になって担っている家庭が多すぎます。

家庭での仕事を一手に引き受け、さらに社会でも仕事をこなし、クタクタになっているお母さんのなんと多いことでしょう。

子どもにぜひ「家庭での役割」を持たせてあげてほしいと思います。

「人の役に立つ幸せ」を持てる子は強い

たとえば、お米を洗って炊飯器のスイッチを押すこと。学校から帰ってきたら、洗濯物を取り込んで畳むこと。

親が仕事から帰ったとき、もうほかほかのごはんが炊けていたらどうでしょう? 忙しくても、スーパーで買ったお惣菜を並べれば、すぐに夕食が食べられます。

親のほうは、「今日もごはんを炊いておいてくれてありがとう!」と、心からの感謝を伝えたくなるはず。食後にはお風呂に入って、夜9時にはパッと眠れます。イライラするところ、怒るところが全然ないでしょう?

役割を持ち、家族から感謝されることで、子どもは日々「人の役に立つ幸せ」を感じられます。

ポイントは、「誰かがやらなければ家族みんなが困ること」を子どもの役割として設定すること。子ども自身がやりがいを持って取り組めるように、年齢に応じてステップアップしくといいですね。

勉強は「やりたければご自由に」

よく「勉強するのが子どもの仕事」なんて言う人がいますが、私はこれには大反対です。勉強は、子どもの義務ではありません。「やりたければ勝手にやるもの」です。

自分の役割をやって眠るまでの時間のなかで、やりたければ自由にどうぞ。たとえ宿題をやらずに学校に行ったとしても、それも経験。困ったと思うなら、子どもは自発的にやり始めます。

勉強よりも"原始的な脳"育て

子どもの幸せを考えるなら、すべての土台となる原始的な脳(食べたり、排泄したり、体温調節をしたりといった、生きるために必要な体の機能をつかさどる)をきちんと頑丈につくりあげることのほうがよっぽど大切です。

そして、さまざまな体験、チャレンジを通して「自分は大丈夫」と思える自信を育てること、家族の一員として「人に役に立つ幸せ」を感じる体験をたっぷり積むこと。

こうした経験はすべて、子どもが親元を離れた後、自立して幸せに暮らしていくための糧となります。

成田奈緒子(なりた・なおこ)●小児科医、発達脳科学者。文教大学教育学部特別支援教育専修教授。神戸大学医学部を卒業後、米国セントルイス大学医学部留学、獨協医科大学越谷病院小児科助手、筑波大学基礎医学系講師を経て現職。「子育て科学アクシス」主宰。

取材・文/浦上藍子

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