CKからの16得点はリーグ最多タイ記録!…アーセナルを陰で支えるセットプレーのスペシャリスト

現地時間28日に行われたプレミアリーグ第35節でアーセナルはトッテナムと対戦し、3-2で勝利した。

今シーズン2度目のノースロンドン・ダービーは手に汗握る接戦となった。敵地に乗り込んだアーセナルは前半だけで3点を先行するも、64分にスペイン代表GKダビド・ラヤのキックミスから1点を返されると、84分には韓国代表FWソン・フンミンにPKを沈められ1点差に。その後はトッテナムの猛攻にさらされたものの、最後まで集中力を切らさず、3-2で試合を締め括った。苦しみながらも勝ち点「3」を獲得したアーセナルは暫定首位の座をキープしている。

勝敗を分けたのはセットプレーだと言っても過言ではないだろう。アーセナルの先制点となったデンマーク代表MFピエール・エミール・ホイビュルクのオウンゴール、3点目のドイツ代表FWカイ・ハフェルツのヘディングシュートはいずれもCKから生まれたもの。対するトッテナムアルゼンチン代表DFクリスティアン・ロメロがセットプレーから2度決定機を迎えており、20分にはイングランド代表MFジェームズ・マディソンのFKに合わせたヘディングシュートが身右ポストを叩いている。仮にこれが決まって同点に追い付いていれば、少なくとも試合展開は異なるものとなっていただろう。

アーセナルがセットプレーに強いのは今節に限った話ではない。イギリスメディア『スカイスポーツ』によると、今シーズンのアーセナルはPKを除いたセットプレーから合計22ゴールをマークしているが、これはリーグ最多の数字。また、セットプレーから喫した6失点も今シーズンのリーグ戦における最少の数字となっている。

とりわけCKで強みが発揮されており、ここまで挙げた16ゴールは2016-17シーズンのウェストブロムウィッチと並んで、プレミアリーグの1シーズンにおける最多記録となっている。イングランド代表FWブカヨ・サカと同MFデクラン・ライスのキック精度が高いのは言うまでもないが、イングランド代表DFベン・ホワイトが相手GKの動きを制限したり、ブラジル代表DFガブリエウ・マガリャンイス、フランス代表DFウィリアン・サリバ、ハフェルツが敢えてオフサイドポジションに陣取ったりするなど、得点の可能性を高めるための多様な工夫がなされており、ショートコーナを含めたバリエーションは豊富だ。

これを主導しているのがセットプレーコーチを務めるニコラス・ジョバー氏。かつてモンペリエのアナリストやブレントフォードのコーチを務めた42歳のフランス人は、マンチェスター・シティ時代に仕事を共にしたミケル・アルテタ監督の誘いを受けて、2021年夏にアーセナルへ加入。すると、ジョバー氏の着任初年度からアーセナルのセットプレーは大幅に改善され、得点数はその前のシーズンの「6」から「16」まで増加した。

アーセナルに“セットプレー革命”をもたらしたニコラス・ジョバー氏 [写真]=Getty Images

アルテタ監督は同氏の就任直後に「彼の専門知識は我々にとって信じられないほど有益で価値がある」とコメントしていたが、その言葉通り、ジョバー氏の編み出すセットプレーはアーセナルに多くの勝ち点をもたらしている。

長かった2023-24シーズンも残りわずか。20年ぶりのリーグ制覇を目指すアーセナルの戦い、そしてセットプレーに注目だ。

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