【ライブレポート】フジロックのキックオフイベントに田島貴男(Original Love)&betcover!!登場「フジロックで会いましょう!」

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『FUJI ROCK FESTIVAL '24』(7/26~28 新潟県湯沢町・苗場スキー場)のキックオフイベント『Smash Go Round FUJI ROCK NIGHTS』が4月24日に東京・渋谷CLUB QUATTROで開催された。

苗場で25回目の開催を祝して行われたこのイベントには、田島貴男(Original Love)、betcover!!が出演。会場にはフジロッカーたちが集結し、約3カ月後に行われるフジロックへの期待とともに心地よい一体感と高揚感を生み出していた。

会場には苗場初年度の1999年から2023年までに至るフジロックのライブ写真――フー・ファイターズ、ビースティ・ボーイズ、ウィルコ・ジョンソン、The Birthday、忌野清志郎など――やポスターなどを展示。さらに苗場の会場内に設置されるボードウォークの天板への寄せ書き、今年のフジロックグッズの販売、フジロックの代表的なフェスごはん「とろろ飯」の特別販売なども行われ、一足早いフェスの雰囲気に包まれていた(苗場のフジロック皆勤賞の筆者もテンション上がりました)。

フロアに入るとDJのMichael(Tangle)が「ニュールンベルグでささやいて」(The Roosters)をプレイ中。バルカン音楽~ポストパンク~ジャズをつなぐような選曲でオーディエンスの気分をさらに高めていく。

19時を過ぎた頃、betcover!!が登場。いつの間にか坊主頭になっていた柳瀬は両手にサイリウムを持ってステージに現れ、いきなり〈時計は止まることを知らないよ〉と歌い始める。オープニングは初期の名曲「ダンスの惑星」。さらに「狐」「幽霊」と濃密でしなやかなバンドグルーヴを堪能できる楽曲を続けた後、アバンギャルドなスピード感に貫かれた「壁」、サックスとドラムの即興演奏を挟んで「馬鹿野郎!」と叫び「バーチャルセックス」へ。

冒頭から7曲連続で演奏。オルタナ、ジャズ、ロックンロール、ポストパンク、ノイズ、歌謡曲などを自在に行き来する音像、聴き手の脳内に映像を喚起するようなボーカルを軸にしたbetcover!!のスタイルをダイレクトに描き出してみせた。この日のバンドメンバーは白瀬元(Pf)、松丸契(Sax)、高砂祐大(Ds)、吉田隼人(Ba)。高い技術と際立った個性を持つミュージシャンたちによるアンサンブルは本当に刺激的だった。

2本のサイリウムを頭上でクロスさせ「X(エックス)」とつぶやいた柳瀬は、「ランランラララン」と歌い始め、「あいどる」を披露。ノスタルジックな旋律と〈ユメでよかった〉のリフレインが絡み合い、観客はゆったりと身体を揺らす。

さらに直線的なビートのなかで〈今度こそ逃げ延びられるだろうか〉というラインを高らかに響かせる「不滅の国」でフロアの熱気を上げた直後、憂いを帯びたピアノとサックスが共鳴し、雰囲気は一変。そのうえに轟音のギターサウンドが重なり、「卵」へ。静と動、抑制と解放が交互に訪れるサウンド、そして、生々しい身体性と神話的なスケール感を併せ持った歌詞は言うまでもなく、betcover!!でしか体感できない。

最後は獰猛なベースラインからはじまった「炎天の日」。ポエトリーリーディングを交えた歌が映し出すのは場末の恋模様か、真実の愛か。劇伴のようなドラマティックなアレンジ、現代のシャンソンと呼ぶべきボーカル表現も強く心に残った。

Michael(Tangle)のDJタイムを挟み(RCサクセションの「空がまた暗くなる」にグッと来ました。今こそ聴かれるべき名曲)、田島貴男(Original Love)のステージ。ギター(リゾネーターギター、フルアコ、アコギ)とボーカル、さらにキック音、ルーパーなどを駆使して繰り広げられる“ひとりソウルショウ”スタイルだ。

革ジャンでキメた田島はリゾネーターギターのボディを叩いてリズムを生み出し、1曲目の「フリーライド」を披露。曲が進むにつれて歌の熱気が上がり、観客の高揚感を引き出してみせる。

さらにスライドギターの響きとキックの音、〈短い街の夜を 鮮やかに生きる〉というフレーズが共鳴した「ブロンコ」、圧倒的なスピード感と開放的なブルースフィーリングに溢れた「ローラー・ブレイド・レース」、そして、〈すべてを果たして すべてを燃やして〉というフレーズが聴こえてきた瞬間にオーディエンスが沸き立ち、人生を祝福するような歌へとつながった「フィエスタ」へ。2011年からはじまった“ひとりソウルショウ”。ルーツミュージックへの造詣、高い演奏技術、新鮮な衝動を共存させた田島貴男の“今”の表現がそこにあった。

この日、誕生日を迎えた田島貴男。「誕生日おめでとう」「ハッピーバースディ!」という観客の声に両手を上げて応えると、革ジャンを脱いで「髑髏(しゃれこうべ)」を演奏。軽妙なフレーズの向こう側に、ブルース、ソウルへの奥深い背景が感じられるギタープレイがとにかく素晴らしい。

ギブソンのフルアコに持ち替えて披露されたのは「接吻」。本格的なジャズギターが反映されたイントロ、最初はスローなテンポではじまり、途中でBPMを上げる構成はいつも通りだが、何度聴いても心が躍る。しなやかさと濃密さを同時に感じさせてくれるボーカル、カウンターメロディを取り入れたギターも絶品だ。

続く「冗談」ではアコギにディレイをかけ、タクシーのなかで〈ぼくを覆い尽くした悪い冗談や孤独と争う毎日〉を想う情景を生々しく表現。口で発したリズムをルーパーに取り入れ、即興的なトラックとともに演奏された「ソウルがある」も強烈なインパクトを残した。

2022年リリースのアルバム『MUSIC, DANCE & LOVE』に収録されたこの曲は、争いが絶えない深刻な現状に向けたメッセージ色が強い楽曲。魂全開のボーカルとともに放たれた〈ソウルが血を流している〉〈愛が叫び声を上げている〉という言葉は、すべての観客の心にしっかりと刻まれたはずだ。

本編ラストはブルースハープの音色を交えながら披露された「JUMPIN’JACK JIVE」。オーディエンスの手拍子と歌声が沸き起こり、この日、この場所、この瞬間だけのセッションが生まれた。

アンコールは「bless You!」。〈手を鳴らそう みんな踊ろう こころに〉という歌詞の通り、観客は思い切り手を鳴らし、踊りまくる。最後に田島は「どうもありがとう! フジロックで会いましょう!」と叫び、イベントはエンディングを迎えた。早く苗場に行って、素晴らしい音楽を浴びまくりたい。この場所にいたすべての人が同じ思いだったはずだ。

Text:森朋之 Photo:Taio Konishi

<公演情報>
Smash Go Round FUJI ROCK NIGHTS
4月24日(水) 渋谷CLUB QUATTRO

セットリスト■betcover!!1. ダンスの惑星2. 狐3. 幽霊4. 壁5. バーチャルセックス6. イカとタコのサンバ7. 翔け夜の匂い草8. あいどる9. 不滅の国10. 卵11.炎天の日.■田島貴男(Original Love)1. フリーライド2. ブロンコ3. ローラーブレイドレース4. フィエスタ5. しゃれこうべ6. 接吻7. 冗談8. ソウルがある9. ジャンピング・ジャック・ジャイヴEN.bless You!

<イベント情報>
『FUJI ROCK FESTIVAL '24』 7月26日(金)~28日(日) 新潟・苗場スキー場

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/events/frf/

公式サイト:
https://www.fujirockfestival.com/

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