フォーミュラE第8戦 ジャガーのミッチ・エバンスがモナコE-Prix制覇!

2024年4月27日、フォーミュラE第8戦がモナコ・モンテカルロ市街地コースで行われた。シーズンの折り返しとなる今大会はチャンピオン争いでも重要な1戦だが、伝統のモナコを制したのはジャガーのミッチ・エバンス(JAGUAR TCS RACING)だった。

フォーミュラEでは「抜ける」モナコに 美しい街並みでオーバーテイクの嵐

「ここは抜けないモンテカルロ」

1992年、F1ブーム真っ只中であったこの年のF1モナコGPは伝説のレースとして今も語り継がれている。当時開幕5連勝という新記録を打ち立て、悲願のモナコ制覇に挑んだナイジェル・マンセルとモナコ4勝を誇る3度のワールドチャンピオンで、アイルトン・セナの熾烈でフェアで劇的な死闘が繰り広げられたからだ。

レースウィークの木曜日に発表された現行マシンのアップグレード版「Gen3 EVO」

この記念すべき50回大会の実況を担当したのがフジテレビの三宅正治アナウンサー。彼が口にした上記の文言はF1ファンにとってあまりに有名な名実況である。モナコ=抜けないというのが共通認識だが、フォーミュラEでは話は別。F1では考えられないくらいのオーバーテイクが行われているのだ。

フォーミュラEはF1に比べマシンがコンパクトであることや、普段市街地でのレースが主なフォーミュラEのドライバーにとって追い抜きしやすい部類のコースと言える。昨年のモナコE-Prixではジャン・エリック・ベルニュ(DS PENSKE)は22番グリッドスタートからポジションを15もあげ7位でフィニッシュを果たしている。レース全体で言えば100回以上オーバーテイクが繰り返されたほどだ。

2022年からF1と同じフルコースでの開催になったこともオーバーテイクが増えた要因の一つである。追い抜き可能なモナコでのレースはこれまでにないエキサイティング。F1をはじめとする他のカテゴリーのみ追いかけているという方も、フォーミュラEのモナコE-Prixは違った面白さが味わえるのではないだろうか。

そんなフォーミュラEのモナコE-Prixだが、レースに先立ち、ジャガーは同カテゴリーに2030年まで参戦を継続することを発表した。Tokyo E-Prixでも日産が継続参戦することを発表したが、それに続く長期の参戦発表となった。

また、シーズン13からは新しいレギュレーションとともに、新しくGen4もデビューすることが決まっているが、木曜日には来季から2シーズンにわたって使用されるアップグレード版「Gen3 EVO」も発表されている。

巧みなチームプレイでジャガーチームがワンツーフィニッシュ

接触のないクリアなスタートを決めたドライバー達。

決勝前に行われた予選では、ポイントランキング首位のパスカル・ウェーレイン(TAG HEUER PORSCHE FORMULA E TEAM)がポールポジションを獲得。フロントローにはストフェル・バンドーン(DS PENSKE)が続いた。3番グリッドにはニック・キャシディ(JAGUAR TCS RACING)、エバンスが4番手とジャガー勢が2列目を独占している。

29周のレースはポールシッターのウェーレインがトップのままターン1へ侵入。バンドーンの後ろではエバンスが3位に上がった。トップのウェーレインは上位勢で真っ先にアタックモードを使用し5番手に後退。そんな中、4周目のプールサイドシケインでエドアルド・モルタラ(MAHINDRA RACING)がクラッシュしたことによりセーフティカーが出動した。この時点でトップのバンドーンはSC出動直前にアタックモードを使用しており、ポジションをキープしたままアタックモード1回目を消化。一方、2番手と3番手につけるジャガーの2台はまだアタックモードを消化できずにいる。

DSチームはモナコで特別カラーリングを披露。色の配色を逆にし往年のJPSカラーに。

9周目にレースが再開されると、首位バンドーンが翌10周目に2度目のアタックモードを使い義務を消化し3番手に後退。これでワンツー体制になったジャガーはチームプレイを敢行した。2番手のキャシディがペースを下げ後続を抑え込み、十分なマージンを得たエバンスがポジションを下げることなくアタックモードを消化したのだ。

2回の消化義務を終えたエバンスは14周目に首位の座をキャシディに明け渡し、今度はキャシディに対して同じサポートを行っていく。このジャガー陣営の策略に影響されたライバル勢は接近戦を強いられることになり、至る所で激しいバトルが展開された。

後続のバトルを尻目に各アタックモードを消化したジャガーの2台は、エバンスが再びトップに立ちレースをリード。

25周目のラスカスでニコ・ミュラー(ABT CUPRA FORMULA E TEAM)がストップしたことにより再びSCが出動となるもジャガーの優勢は変わらず。レースをコントロールしたエバンスとキャシディは最終盤になると後続を引き離し磐石の体制を築いてみせた。

ライバルに隙を与えなかったジャガー勢がワンツーフィニッシュでモナコ制覇。3位には1度目のSCをうまく使いながらもジャガーのチーム戦略に破れてしまったバンドーンが入っている。

伝統のモナコをチームプレイで勝ち取ったジャガーチーム。エバンスにとっては悲願のタイトルに向けて最高の結果となった。

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