『Destiny』真樹の主治医が貴志であるという因果 安藤政信はまたも“不気味”な役柄に

『Destiny』(テレビ朝日系)第4話にして、第1話目冒頭にあった奏(石原さとみ)と真樹(亀梨和也)が取調室で向かい合う構図が観られた。奏との果たせなかった約束をきちんと覚えていた真樹から12年越しに手渡されたバニラアイスに胸が詰まる。

そんな彼の口から語られた12年前の事故の真相によると、暴走したカオリが自分でハンドルを切り、あのような悲しい結末を迎えてしまったようだ。ハンドルについた真樹の指紋は、彼女の暴走を止めるためにできたものだった。

そしてこの事故に関わりがあるのが、奏の父親・辻英介(佐々木蔵之介)が最後に検事として関わった「環境エネルギー汚職事件」だ。有罪が確実視されていた政治家たちは裁判でその証拠が覆されて、英介だけが逮捕される結果に。彼を糾弾した真樹の父親で弁護士の野木浩一郎(仲村トオル)はこの裁判で名を上げたが、彼は元検事で英介の同期、そしてライバル関係にあったようだ。

やはりこの事実に最初に気づいたのは知美(宮澤エマ)で、それを思わずカオリに話してしまったことをずっとずっと悔い続けていた。

驚くべきは、カオリが浩一郎の東京の事務所まで真相を聞きに行っていたということだ。そこまでの執着とも言える原動力は真樹への好意もありつつ、やはり5人での“友達関係”をなんとか守ろうとしてのことだったのだろう。カオリの行き過ぎた行動が車内で真樹をカッとさせ、そして司法試験を控えた知美を呆れさせる。

自分が打ち明けてしまったことがきっかけでどんどん大事になっていくさまに、知美も焦りを覚え巻き込まれたくなかったのだろう。「就職でも頼みに行ったの?」と、当時のカオリを確実に、最も傷つける言葉を、そのことを自覚していながら放ってしまう。自分の中に悪意があることをはっきりと意識しながら言い放ってしまった一言が取り返しのつかない事態を招いた場合、その罪の意識は深く刻み込まれ尾を引くものだろう。

カオリの「トモなんか、トモなんか……」に続けようとして飲み込んだ言葉は「友達じゃない」だったのだろう。だがそれを言ってしまえば本当に一生元の関係には戻れない気がして、あまりに悲しすぎて言えなかったのだろうカオリのことを思えば、それも不憫だ。

煌く青春の日々、屈託のない友との時間、同じ匂いがする初恋の相手との大恋愛……。そのどれもがほんの少しのかけ違いで一瞬にして呆気なく失われてしまう。「友達」という関係性の継続の難しさが本作には詰まっている。カオリは本当にかけがえのない友達関係を継続したくてやったことを、真樹への好意や奏への嫉妬と知美からすり替えられたことに怒ったのだろう。ただ、彼女の中にだって混じりけなしの友情だけがあったわけではないことを、自分だってわかっていたのだろう。それを否定して「友達だから」なんてことを言い通すカオリの姿が都合よく綺麗ごとに感じられたのだろう知美の気持ちもわかる。さらには自分の就活が行き詰まっている時に、そのことをこんな場面で知美から持ち出されたことにカオリが大きなショックを受けたことも想像に容易い。

「友達」という枠の中でこっそり恋心を持ち寄っていたのは、何も奏と真樹だけではなかった。いま夫婦関係にある祐希(矢本悠馬)も知美のことをずっと想い続けていた。「友達」という関係の中でもいろんな矢印が飛び交い、時と共にその形は変わっていく。それは1対1の友人関係でもそうだし当然のことだが、各人の人生に占める「友達」のウエイトが高い学生時代やモラトリアム期間こそ、その関係性の変化が許せなかったり振り回されたりするものだったような記憶がある。

さて、そんな中存在感を増しているのは、奏の婚約者・貴志(安藤政信)だ。真樹が胆嚢がんであることを最も隠したい相手であろう奏の婚約者が、自身の主治医であるという因果が描かれる。安藤はこれまでもサイコパスかのような役柄を演じることが多く、彼の一見したところ柔和ながら腹の底では何を考えているのか見えない佇まいや表情が、新たなる波乱の幕開けを感じさせる。

取調室で「話してもらわないと私、前に進めない」と言った奏に対して、真樹は「俺は終われない」と口にした。これは自分の中でこの一連の出来事についてケジメがつけられないという意味だけでなく、自分自身の人生という意味合いもあったのだろう。真樹の置かれている状況を知ってしまった今、改めて彼の言動を思い返すと、真樹がどれだけの覚悟を持ってこの事件と向き合っているのか痛いほどわかる。

上司の大畑(高畑淳子)から、英介のことをよく知る人物として紹介された新里龍一(杉本哲太)と奏との対面場所で彼らの様子を監視する男は、浩一郎に探りを入れていたのと同一人物だ。かなり大きな力が動いているのだろう「環境エネルギー汚職事件」の真相に奏と真樹は辿り着けるのか。今こそ真樹に「これからも一緒に生きていこうぜ」と声を掛ける友の存在が、特別な人が必要だろう。
(文=佳香(かこ))

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