首相、衆院解散を否定「全く考えていない」 島根1区の敗因は裏金事件が「大きく足を引っ張った」

衆院3補選の全敗を受けて報道陣の取材に応じる岸田首相

 岸田文雄首相は30日、島根1区など自民党が全敗した衆院3補欠選挙を踏まえ、衆院解散を「全く考えていない」と強く否定した。党内で強まる早期解散慎重論を考慮した可能性がある。島根1区の敗因は、党派閥の裏金事件が「大きく足を引っ張った」との見方を示し、陳謝した。

 3補選後初めて官邸に入り、報道陣の取材に応じた。従来は国会審議や記者会見で衆院解散を問われると「今は考えていない」と答える場面が多かった。この日は「今は」の前置きを外し、完全否定した格好だ。

 3補選で唯一候補者を立てた島根1区の敗北は「真摯(しんし)に重く受け止めている」とし、「自民党の政治資金の問題が大きく足を引っ張ったことは、候補者や地元の方々に申し訳なく思っている」と述べた。党執行部の責任や交代に関しては「党改革や政治改革、賃金、物価高対策で答えを出し、国民の信頼回復に努めたい」と話し、明言しなかった。

 大型連休明けに本格化する政治資金規正法の改正論議を見据え、「自民党案を責任を持って取りまとめる」と表明。同法以外の政治とカネの課題でも「党の方向性を明らかにしたい」と述べた。

 公明党の山口那津男代表は記者会見で、衆院解散の望ましい時期を問われ「政権に対する信頼回復に力を注ぐことが一番大事だ」と答えるにとどめた。

 立憲民主党の岡田克也幹事長は、秋の自民党総裁選で再選を目指す首相の心情を推測して「6月解散が残されたただ一つの道」と指摘し、候補者の擁立を急ぐ考えを示した。共産党の小池晃書記局長は「補選の結果は岸田政権に対する明白な不信任となった。潔く身を引くべきだ」と話した。

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