日替わり“850円” ハンバーグにビーフリヨネーズ…地下鉄近くの老舗洋食店

いつまでも変わらずに残り続けてほしいグルメ、あなたにもありますか。ノスタルジックな店内に、子どもの頃食べたどこか懐かしいメニューの数々。いつまでも残したい老舗の味。今回は、札幌市北区の地下鉄麻生駅の近くにある老舗洋食屋『独多日(ひとりたび)』を紹介します。

午前11時、お店を開けるのは、店主の荏原孝治さん、72歳。

フォークソングのタイトルから取ったという『独多日』という店名。木のぬくもりを感じられる、レトロな作りの店内にはゆったりとしたときが流れます。

喫茶店のような雰囲気ですが、厨房に目を向けると、ランチの準備で大忙し。

毎朝8時30分から作業をしても間に合わないというほど、オープン直後からお客さんが続々と。

やさしい声でお客さんを接客するのは、妻の典子さん。他にスタッフの佐藤さんがランチタイムはフォローします。

ランチタイムのお客さんのお目当ては、日替わりランチ。ドリンクもついて、850円です。

「50回くらい日替わりを食べ続けている。何食べてもおいしい」と週2回は来ているという常連さん。

めいごさんと一緒に来たというお客さんは「3ヶ月前に引っ越ししてきてからたびたび『独多日』。とってもおいしい」と話します。

850円の日替わりランチ、価格は10年前からほとんど変わっていません。

全国的な卵不足のときさえも、「お客さん喜んでもらえれば」と値段を上げなかったと言います。

ランチタイムは常に満席状態で厨房の中は戦場です。

孝治さんが独多日をオープンしたのは1979年。札幌の有名ホテルのシェフを辞め、28歳という若さで麻生駅の近くにお店を構えました。

実はその前年には、地下鉄南北線の北24条駅間が開通するなど、麻生駅周辺は大きく変わり、札幌で最も注目を浴びる場所でもありました。

1980年代、自動車学校はどこも多くの生徒たちで賑わっていました。近隣の麻生自動車学校の生徒や教官もよくお店に来ていて、毎日のように出前もしていたそうです。

誰かを連れて行きたくなるような独多日の味、一見普通の作り方のようでも、そこには孝治さんの44年の技術が。

ハンバーグから出る油を揚げ油にプラスすることで、肉やタマネギのうま味、香辛料の香りが加わって、おいしくなるんですって。

20年ぶりに訪れた男性が食べていたのは…
若いころ何度も食べたという“思い出の味” ビーフリヨネーズ。

ハンバーグに並んで、独多日を代表する看板メニューです。

働いていたホテルにあったメニューが好きで、自分でお店をやったらぜひ作りたいと思っていたんですって。

最近は、昔からの常連客以外にもインスタグラムなどをきっかけに来る若者のお客さんも多いんだそう。

レトロな店内も独多日の魅力。拾ってきた流木などを磨いて飾っています。

孝治さんの趣味は、魚釣り。休みの日は必ずと言っていいほど釣りに出かけて、そこで気に入った流木などを見つけては持ち帰り、DIYするんですって。

素敵なライトや木彫りの看板まで自作しちゃうんですよ。

40年以上使っているコーヒー豆の焙煎機も、孝治さん自慢の品。

ランチにつくコーヒーも、実はこだわりの一杯。4種類の豆を自分でブレンドして、年代物の焙煎機で丁寧に焼き上げます。

ハンバーグに大きなエビフライが2本ものったメニューも。

オープン当初から来ている孝治さんの同級生という女性は、いつも友人や親戚を連れてきて、大きなエビフライをおすすめすると、みんな大好きになってくれるのがうれしいそうですよ。

息子の荏原孝弥さんはオペラ歌手として東京で活躍。常連客の中には店の跡継ぎをやりたいという人はいますが、後継者はまだ決まっていません。

独多日の今後に、常連客は「居心地のいいところをなかなか見つけられない。自分が落ち着く場所がなくなるのはさびしい」「もう1回来たいというお店。残ってほしい」と。

それを聞いた孝治さんは「うれしい。奥さんが笑顔で注文取ってきてくれて笑顔で『お待たせしました』って、それでひとつの店。2人で動ける間はやってみようかな」と話します。

息のあった孝治さんと典子さんの2人で作り上げた独多日。1日でも長く残ってほしい味です。

独多日(ひとりたび)
住所:札幌市北区北35条西5丁目
営業:午前11時~午後9時30分(LO午後9時)
定休日:月曜日・第3火曜日

*みんテレ4月24日OAのものです
(上記の情報は記事作成時点でのものです。
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