流浪のアタッカー黒川淳史が語る「前半と先制点」と「ボール回し」【崖っぷち「水戸ホーリーホック」の救世主を探せ】(2)

4月27日に行われた明治安田J2リーグの対藤枝MYFC戦を2-3で落とし、残留争いの荒波に飲み込まれた水戸ホーリーホック。この危機的な状況を打開するためには、どうすればいいのか。サッカージャーナリストの川本梅花が、藤枝MYFC戦で存在感を発揮した「流浪のアタッカー」黒川淳史への試合後のインタビューを基に徹底分析。水戸ホーリーホックの現在のチーム状況と、クラブの未来を担う「救世主」の存在を吟味する!

右サイドの黒川を起点に「藤枝ゴール」に襲いかかる

藤枝戦の後で、黒川淳史と長い会話をすることになり、試合の内容や今後の彼の目標を話してくれた。彼が語った言葉をつなげながら、藤枝戦を振り返ってみたい。

水戸のフォーメーションは、中盤がボックス型の「4-4-2」を採用している。一方の藤枝は、3バックシステムの「3-4-2-1」を使ってきた。藤枝は、前節の徳島ヴォルティス戦から4人のメンバーを代えてきており、特に、初スタメンとなった左ストッパーのウエンデルの起用は予想外だった。

試合開始から水戸は前がかりになり、積極的に藤枝ゴールに襲いかかる。右サイドハーフの黒川がピッチの中央に入ったり、少し後ろにポジショニングをしたりして、その黒川の動きに相手がつられるので、右サイドバックの村田航一の縦への突破の道が作られることになる。前半14分の大崎航詩の先制点は、そうした状況から生まれた。
ピッチ中央に入り込んだ黒川からサイドを走る村田へパスが出され、村田が上げたクロスに安藤瑞季が頭で合わせる。ヘディングシュートはゴールポストに弾かれたが、ボックス内にいた大崎が、足元に転がり込んできたボールを左足で大きく振り抜いて先制点を奪った。
この場面、厳しい見方をすれば、藤枝のゴールキーパー(以後、GKと記す)の北村海チディは、前に出てきていたので、少なくともボールに触らなければいけない。藤枝側からすれば、GKの判断ミスからの失点だとも言える。

「大事にボールをつなごうという意図はあった」

前半の黒川のプレーは「得点を狙いながら、ホームで勝ちがなかったので、勝てるようにという感じで入りました」と本人が言うように、ボックス内にポジショニングしてゴールを狙える位置で準備をしていた。だが、先制点をあげてしばらくしてから、水戸に不思議な現象が起こる。最終ラインがセンターラインを超えて藤枝陣内に入り込み、ボールを回し始めたのだ。このことに関して黒川は「どちらかというと勝っている状況で、失点したくないと考えたんでしょう。僕はそんなことはなかったんですけど、全体的に大事にボールをつなごうという意図はあったんだと思います」と答える。
失点したくないと考えて、大事にボールを回しながらゲームを進めたい気持ちはよくわかる。しかし、藤枝は、先制点を奪われて下を向きつつあった状況なのだから、もっとアグレッシブに思考して、追加点を奪って相手の心を折るチャンスはあったはずだし、なぜ、そうしなかったのかが残念でならない。

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