「明暗を分けたサイドの攻防」黒川淳史が語る「苦境での水戸の選択」【崖っぷち「水戸ホーリーホック」の救世主を探せ】(3)

4月27日に行われた明治安田J2リーグの対藤枝MYFC戦を2-3で落とし、残留争いの荒波に飲み込まれた水戸ホーリーホック。この危機的な状況を打開するためには、どうすればいいのか。サッカージャーナリストの川本梅花が、藤枝MYFC戦で存在感を発揮した「流浪のアタッカー」黒川淳史への試合後のインタビューを基に徹底分析。水戸ホーリーホックの現在のチーム状況と、クラブの未来を担う「救世主」の存在を吟味する!

「前半途中からずっとサイドに課題を持っていた」

実は、この試合の明暗を分けたのは、水戸の右サイド、藤枝の左サイドの攻防にあった。藤枝は、大胆な策をとってきた。センターバックの中川創と右ストッパーの小笠原佳祐の2人のディフェンダーに最後尾を守らせて、左ストッパーのウエンデルにウイングバックのような役割を担わせ、高い位置を取らせ始める。黒川はこの現象に関して「僕らの(右)サイドに人数をかけてきたので、そこがなかなか改善されずに、前半途中からずっと終始、そこに課題を持って時間が過ぎていった感がありました」と告白する。
ウエンデルが高い位置をとって、なおかつ左サイドの榎本啓吾がサイドライン近くにポジショニングすることで、水戸の村田は前半のように高い位置を取れずに、押し込まれた状態になってしまった。黒川は冷静にサイドの攻防を振り返る。
「右サイドに人数をかけてくることは想定していましたけど、思った以上にウエンデルが高い位置をとってくるので、そこはけっこうやっかいでした。彼はルーズなボールでも競れるから。なおかつ、(村田)航一くんがスライドしたところの裏に10番の榎本が流れてきたりしていたので、彼の動きに間に合わないことがありました。まあ、相手のミスで大きなピンチになっていなかったんですが、形としてはそこを通されていたら、やられてしまう形も多かったと思います。ただ、そこで僕が引いてしまうと、ずっと押し込まれる形になるので、そこの対応は難しかった。サイドの攻防に目を向ければ、難しい場面もありましたけど、逆を言えば、前半のように相手陣地でやっていければ、そんなに相手は攻めてこられないと思うんです。点が入ってから後ろから回そうとなって、相手の背後が取れていない状況が続いた。相手よりも前でプレーしていて、うまく外せているように見えているけど、どっかでパスがズレて取られるというシーンが多くなりました」

システム変更ではなく「駆け引きとハードワーク」で改善

こうした難しい状況は、フォーメーションやシステムを変えることで対策はできないものなのか。水戸が選んだ選択を黒川は次のように話した。
「フォーメーションというか、システム上、仕方のないものがあって、そこはハードワークで乗り切るというか、システムを変えるのではなく、そこで駆け引きとハードワークで改善しようという感じだったんです。ただ、右サイドに人数が多いのは変わらなかったし、GKからいいボールが蹴られていたので、まあ、藤枝は狙っていたのかなと思いました」

相手との「駆け引きやハードワーク」で状況を乗り切ろうとした水戸。藤枝と対戦する前に、「3-4-2-1」のフォーメーションでくることは分かっていたのだから、こうした難しい対応はある程度、予測できたはずだ。それならば、ミラーゲームにして同じフォーメーションで対抗してもよかったのではないかとも考えられるのだが…。

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