亡くなった愛犬に関する超自然現象は飼い主の心を慰めるという研究結果 アメリカの大学教授による発表

亡くなった愛犬にまつわる超自然現象についての系統的な研究

愛犬や愛猫を看取った後に通常とは違う感覚で、彼らがそばに居るように感じたという体験談を見聞きしたり、自分自身が不思議な体験したという方はたくさんいらっしゃいます。

幽霊というと怖い感じがしますが愛するペットが亡くなった後、このような経験を怖い話として語る人はほとんどいません。

「亡くなったペットの存在を感じた」という超自然的な現象は科学的な研究とは相容れないように感じますが、アメリカのメリーランド大学のジェニファー・ゴルベック教授(情報学)は、犬の飼い主が経験した超自然現象に関する初めての系統的な研究を行ない、その結果が発表されました。

この研究の目的は、亡くなった犬との関係において人々が超自然的な経験に対する認識と、飼い主にとってのその意味と意義を調べることだといいます。

過去の他の調査では、ペットを見送った33人の飼い主のうち48%の人が亡くなったペットの存在を感じたことがあるとも報告されています。

SNSを使って、愛犬を見送った人の超自然体験を収集

研究者はソーシャルメディアに「犬を喪った経験がある人で、その犬の幽霊を見たり、サインを受け取ったり、何らかの形でコミュニケーションをとった経験はありますか?」という内容をポストして、返ってきたリプライを収集して分析するという手法をとりました。

データは7日間収集され、フィルタリングの結果544のリプライ内容が分析の対象となりました。研究者はこれらデータの全てを読み、そこからコードを作成して文章中の重要な概念、感情、経験を特定したそうです。

コーディングは「超自然的な経験のタイプ(亡くなった犬の姿を見た、何らかのサインを見た、夢の中に亡くなった愛犬が現れた、など)」と「感情的な反応(悲しい、怖い、慰め、など)」の2つのカテゴリーに分けられました。

回答者から寄せられた超自然的な経験

寄せられた超自然体験は、2つのテーマ「物理的な相互作用」と「解釈された相互作用」に分類されました。

物理的な相互作用とは、実際に亡くなった愛犬を見たり、自分の身体に犬が触れるのを感じた、などです。具体的には次のような例がありました。

  • 愛犬が亡くなった翌朝、ソファーの横で丸くなっているのが見え、ゆっくりと消えた
  • 愛犬が亡くなった後にも首輪に付けていたタグの音を耳にした
  • ベッドやソファーで亡くなった愛犬がそばにいるのを感じた

解釈された相互作用とは、人々が亡くなった愛犬の魂に関係する出来事だと解釈した現象を指します。具体的な例は次のようなものです。

  • 愛犬が何度か夢に現れたが、その時の感じは明らかに他の夢とは違っていた
  • 愛犬が亡くなった1週間後の同じ時刻に犬が好きだった場所の煙探知機が鳴った
  • 愛犬を見送った直後に綺麗な蝶が近づいてきて飛び去った

これらの経験に対する人々が抱いた感情のうち74.6%は肯定的なものでした。人々は慰められ、安心し、守られていると感じたと述べています。否定的な感情のほとんどは失意の感情でした。超自然現象が終わると、参加者は再び愛犬を失ったという感情を抱いたといいます。

愛犬にまつわる超自然現象が飼い主の心にもたらす意義

亡くなった愛犬についての不思議な経験を寄せた多くの人が、「実際には起こっていないことかもしれないけれど」とか「私の心の目が愛犬を見たのだと思います」という言葉を添えていたそうです。

しかし、そのような言葉を添えた人も愛犬にまつわる超自然現象が苦痛よりも安らぎをもたらしたと報告していたといいます。

この点について、研究者は次のように述べています。コンパニオンアニマルの喪失にまつわる社会的に認められた儀式はほとんどなく、認められた喪の期間もなく、飼い主の悲しみはしばしば軽視されるため、悲嘆のプロセスを踏んでいく権利を奪われる悲しみにつながります。

飼い主が主観的に感じる超常的な現象は、権利を奪われた悲しみを無効化し、喪失の悲嘆を正当化する慰めになると考えられます。

死者との超自然的な体験を幻覚や錯覚と呼ぶことは、不思議な体験を科学的に説明できるかもしれないですが、飼い主の主観的な体験を説明することはできません。

亡くなった愛犬に関する超自然的な体験のほとんどがポジティブな感情をもたらすことから、このような体験は重要な慰めの源として、また遺族が喪失と向き合う方法として役立つかもしれないと研究者は述べています。

まとめ

愛犬を喪った人が体験したことのある超自然的な現象について、経験者のほとんどが肯定的な感情を持ったことから、このような経験には遺されたものの慰めという大きな意義があるという研究結果をご紹介しました。

心理学などでは、死者との不思議な体験は否定的な文脈で語られることが多いそうですが、この研究では「悲嘆にくれるという権利さえ否定されがちなコンパニオンアニマルの死において、心理学的な見方とは切り離して考える必要があるのではないか」とも述べられています。

不思議な体験の科学的な意味はさておき、大切な存在を失った人が主観的に経験したことが心の慰めや癒しにつながるなら、その点についてもっと深く考えていこうという研究は優しくて素敵だと感じます。

《参考URL》
https://doi.org/10.1080/08927936.2024.2327174

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