【石川町長逮捕】談合疑惑の徹底解明を(5月1日)

 石川町発注道路工事の指名競争入札を巡り、官製談合防止法違反と公契約関係競売入札妨害の疑いで塩田金次郎町長が逮捕された。石川町では、過去にも贈収賄事件が起きている。町民の衝撃はことさら大きいはずだ。まずは徹底した事実解明を求めたい。

 2022(令和4)年度の道路工事の入札に先立ち、秘密事項の予定価格を地元の建設業者らに漏らし、落札させた疑いが持たれている。県警は認否を明らかにしていないが、事実であれば、町民の町政に対する信頼は大きく傷つく。他の入札にも疑いが広がりかねない。

 町は事実解明に全面的に協力するのは言うまでもない。現職町長の逮捕を重く受け止め、予定価格の管理の在り方を含めた入札の仕組み全般を見渡し、不正の余地はないかどうかを点検すべきだろう。

 町議、県議を経て町長に就任後、台風19号の水害克服や地域防災力の強化に努めてきた。結婚希望者の支援や子どもの一時預かり制度の充実など人口減少対策にも力を注いできた。地元の高校が今春、33年ぶりに選抜高校野球大会出場を果たすなど、町に元気な若者の話題があふれていただけに、今回の事態を残念がる町民は少なくないという。

 町内での贈収賄事件は2006(平成18)年に起きている。町職員採用を巡り、当時の町長が逮捕・起訴され、有罪とされた。町民の記憶も薄れ始めた中で官製談合疑惑が浮上した。町は自由民権運動の発祥地として知られる。町の印象低下を懸念する声も聞こえてくる。

 町長不在が続き、町政の混乱が危惧される。事実解明と合わせ、町政の早期正常化にも努めなければならない。

 会津美里町の町営住宅解体工事の入札を巡る官製談合事件が発覚したのは、つい3年前だ。石川町での事実関係は、捜査の進展を待たねばならないとはいえ、なぜ同種の疑惑が再び持ち上がるのか、疑問を拭えない。

 会津美里町は事件を受け、入札制度改革検討委員会を設置し、公共事業の入札・契約方法の透明性や公平性を高めた電子入札を導入するなどの再発防止策を講じている。

 他の市町村も入札の実施体制を再点検し、入念な談合防止策を構築する契機にしてほしい。(渡部純)

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