伊藤久男「幻の曲」復活、古里・本宮の有志CD化 古関裕而作曲

(写真上)収録に臨んだ荒井混声合唱団と原田さん(左から4人目)、(写真下)歌やカラオケ音源を収録したあぶくま川のCD

 本宮市出身で昭和歌謡を彩った歌手伊藤久男(1910~83年)の幻の曲「あぶくま川」が、地元有志と合唱団らの手でCD化された。福島市出身の作曲家古関裕而と作詞家野村俊夫から伊藤に歌手人生30周年を記念して贈られた曲だったが、レコードには収録されていなかった。有志らは1日からCDの頒布を開始した。

 CD化は、本宮市の松山捷成(とししげ)さん(81)が、2019年の東日本台風で被災した伊藤の遺品を整理していた際に「あぶくま川」の楽譜を発見したことがきっかけ。所属する荒井混声合唱団に紹介し、団員と共に21年ごろから本格的に歌い始めた。松山さんは「貴重な楽曲が失われなくて良かった」と振り返る。

 曲が団員に好評だったことから、音源を収録することを企画。本宮市で慰問コンサートを続けていた縁などから、浪江町出身で郡山市在住のシンガー・ソングライター原田雪見さん(47)にメインボーカルを依頼した。合唱団を指導する本宮市の千葉美智子さん(77)が前奏や編曲を考案し、「学校や地域で歌ってほしい」と、荒井混声合唱団による合唱も収録した。

 古関の遺族や日本音楽著作権協会からCD製作の許可を得た。収録は3月末に本宮市で行い「少しくすぐったくなるような恋の歌。緩やかにしみじみと歌ってほしい」と原田さん。千葉さんは「クラシック風の曲調はまさに古関メロディー。名曲の伴奏を作ることができてうれしい」と喜んだ。

 伊藤の顕彰団体「伊藤久男モニュメント建立実行委員会」などの出資で300枚のCDが完成。希望者に1枚千円で頒布する。楽曲の普及活動も企画しており合唱団は今秋に記念コンサートを開く。松山さんは「これを機に伊藤久男をはじめ、地元に愛すべき歌手や名曲があることを知ってほしい」と期待を寄せる。

 CDに関する問い合わせは松山さん(電話0243.33.4653)へ。

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