被災地では薬剤師仲間のつながりが大きな助けになった【クスリ社会を正しく暮らす】

能登半島地震の被災地支援ではつながりに救われた(C)日刊ゲンダイ

【クスリ社会を正しく暮らす】

災害時、被災地に支援で入る医療従事者ですが、強い使命感を持って自ら進んで名乗り出る人もいれば、そうでない人もいます。私はどちらかといえば後者に当たるかもしれません。現地がどのような状況なのか情報も乏しく、わからないところに行くのはやはり不安でしたし、怖い気持ちも強かったというのが正直なところです。

そんな私を救ってくれたのは、多くの薬剤師仲間とのつながりでした。

東日本大震災の時に派遣された避難所には薬剤師が少なく、大ピンチに陥っていることをSNSにアップしたところ、翌日には多くの薬剤師がヘルプに入ってくださいました。本来なら指揮命令系統にのっとって情報を上げていくのですが、当時はそんな状況ではありませんでした。

今回の能登半島地震では、被災地に入る数日前にたまたま静岡の薬剤師さんに質問があってメールをしたところ、偶然にもその先生は災害支援活動の真っただ中でした。現地の状況やニーズなどについて、活動前に聞くことができたのはとても大きな助けになりました。

また、JMAT(日本医師会災害医療チーム)の一員として現地入りした初日、グループミーティングで普段からとてもお世話になっている大阪の薬剤師さんとお会いすることができ、直前に実際の活動内容について詳しく聞くことができました。活動の終盤には、兵庫の同級生と再会し、その友人から現地・石川の薬剤師さんを紹介していただきました。

JMATでの私の活動は2月9~13日の5日間でしたが、その活動中に県の薬剤師会から派遣要請があり、中3日で17~21日の5日間、新たに珠洲市で活動することが決まりました。珠洲で驚いたのは、つい先日紹介いただいた石川の薬剤師さんが、われわれ薬剤師会の活動拠点のすぐそばの病院で支援活動を行われていたことでした。さらに、10年来お世話になっている薬剤師さんの部下もその病院で活動中でした。

各グループのリーダー同士は、連日の会議などで情報交換していますが、末端ではあまり行われていないものです。これは平時の業務でも同じかもしれません。管理職同士が話し合うのも大切ですが、別の部署でも実際に活動している一人一人が顔を合わせ話すことによって、お互いを思いやることもでき、円滑に業務が進むこともあると思うのです。ちなみにこの時、われわれも知らなかった自衛隊の“お風呂情報”なども教えていただき、みんなで湯船に漬かって疲れも一気に吹き飛びました。一生忘れられない思い出です。

(荒川隆之/薬剤師)

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