里親登録抹消で三重県を提訴 名張の親子、処分取り消し求める

【記者会見する松山さん=津市丸之内養正町の三重弁護士会館で】

 長年にわたり養育していた里子の里親委託を児童相談所が一方的に解除し、三重県が里親の登録を抹消したことは違法だとして、名張市の松山健さん(79)親子は30日、抹消の取消と約2200万円の損害賠償を県に求めて津地裁に提訴した。

 訴状などによると、松山さんと妻のみち子さん(65)は、平成21年6月から当時2歳だった男子高校生(16)を、平成25年8月からは当時3歳だった男子中学生(13)を里子として養育していた。

 児相は令和4年3月、松山さんや高校生からの聞き取りなどから、虐待の疑いがあるとして、里子2人を一時保護。児相は2人の里親委託を解除し、県も夫婦の里親登録を抹消した。

 一方で、津家裁は昨年4月、高校生が夫婦からの虐待被害を否定しているなどとして、夫婦と高校生の養子縁組を許可。3人の同居が再開したが、現在も中学生とは連絡を取ることができていないという。

 松山さんは津市内で開いた記者会見で「大事な子どもを連れて行かれることは苦しい。下の子が帰ってきていないので、取り戻して家族として暮らしたい」と話した。

 原告側の秋田真志弁護士は「児童相談所における虐待への過剰な反応が背景にあると思う。児相には実態を見極めて適切に対応する発想も余裕もない」と主張した。

 県子ども・福祉部児童相談支援課の近正樹課長は「県では子どもの最善の利益を優先的に考慮しながら、里親委託の推進に取り組んでいる。訴訟については、訴状が届いていないためコメントはできない。訴状が届き次第、内容を精査し、適切に対応する」とコメントした。

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