注目の逸材!話題の女優・河合優実の魅力にハマる映画7選

昭和の女子高生にふんしたドラマ「不適切にもほどがある!」でブレイク。現在は地上波ドラマ初主演作「RoOT / ルート」が話題の河合優実。映画も『あんのこと』『ナミビアの砂漠』、声優を務めた『ルックバック』と今後、主演作が相次ぐ。デビューは2019年ながら、2022年だけで8本もの映画に出演し、数々の賞を受賞するなど、キャリアがまた規格外。多くの映画人が認める逸材であり、どんなジャンルでも自然と落ち着く独特なトーンには引き込まれずにはいられない。実年齢23歳には不似合いな貫禄と迫力。なかでも思わず、唸らされる代表作7本を紹介したい。(文 ・高山亜紀)

『あんのこと』(6月7日公開)

入江悠監督がコロナ禍の2020年6月、とある少女の壮絶な人生をつづった新聞記事に触発され、脚本を手がけた人間ドラマ。生活費のために幼い頃から母親に売春を強いられ、小学校もろくに通わず、薬物依存でもあった少女が親身になってくれる刑事とジャーナリストと出会い、更生の道を歩もうとする。河合は母親からの強烈な虐待に抵抗する気力すらない杏を熱演。どんな人生を歩んだらこんな顔つきになるのかと釘付けになるくらい、登場場面から、一気に引き込まれる。社会から取りこぼされた杏が一進一退しながら、次第に人間らしい表情を取り戻していく過程を見守るような気持ちで追いかけずにはいられない。

『少女は卒業しない』(2023)

朝井リョウの連作短編小説を映画化した河合の初主演作。2日後の卒業式で校舎の取り壊しが決まっている高校を舞台に少女4人のドラマが繰り広げられる青春群像劇。卒業までのカウントダウン。上京して地元の恋人と別れ別れになる者や中学からの同級生や先生に人知れず、思いを寄せる者など、それぞれが甘酸っぱい恋心を抱える。ただ1人、卒業生代表として答辞を読む、河合ふんするまなみだけは事情が違う。彼女が別れを告げなければならない相手とは……。ほかの子と比べて、大人びていて、どこか特別に見える河合の本領発揮。彼女のひとりぼっちの別離シーンには思わず、涙。

『愛なのに』(2022)

今泉力哉城定秀夫が互いに脚本を提供し合いR15+指定のラブストーリーを製作するコラボ企画“L/R15”の1本。こちらは今泉の脚本版。古本屋の店主に女子高生が求婚するものの彼には忘れられぬ女性がいて……。登場人物がほぼ全員、片思いのラブコメディー。河合は同年代の男子には目もくれず、なぜか瀬戸康史ふんするくたびれた男性に猛アタックする高校生。河合と瀬戸の会話の相性が抜群で、彼女の口調が落ち着いているほど、慌てふためく瀬戸が面白く見える構造。「RoOT / ルート」の坂東龍太も然り、丁々発止の会話劇でも河合の演技力は冴え渡る。

『PLAN75』(2022)

75歳以上の人が死を選ぶことができる制度「プラン75」が施行された架空の日本を舞台にした現代版“姥捨山”。カンヌ国際映画祭では「ある視点」部門に選出、カメラドール(新人監督賞)スペシャルメンションを授与された。河合は倍賞千恵子演じる主人公ミチに仕事として、「プラン75」を勧めながら、制度に疑問を抱くコールセンターの女性、成宮瑶子役。事務的な声とは裏腹に人知れず、揺れ動く感情を微細な顔の動きで表現。電話でのやり取りだけで、ミチと不思議な友情が育まれていることが見てとれる。監督には河合自ら、さまざまなアプローチを提案したとか。

『冬薔薇』(2022)

阪本順治監督が主演の伊藤健太郎をイメージして脚本を書き下ろしたオリジナル作品。欲に塗れ、一度は堕落した若者が再生しようと足掻く姿を描く。河合は主人公・淳の属する不良グループのリーダーの妹、智花役。誰も歯向かえない兄・輝にも堂々と意見する肝の据わった役どころで、わかりやすい派手な装いでないからこそ伝わってくる立ち居振る舞いが迫力満点。とある事件に巻き込まれる淳のいとこ、貴史役で坂東龍汰も出演している。ベテランから若手まで、日本映画界を代表する実力派揃いのキャスティングでそれぞれが凄みを感じさせる演技を披露している。

『サマーフィルムにのって』(2021)

時代劇マニアの女子高生が寄せ集めの仲間たちと夏休みをかけて、時代劇映画を撮影する青春映画。時代劇×SFをポップに軽やかに映し出す。河合は祷キララ演じる“ブルーハワイ”とともに伊藤万理華演じる主人公・ハダシの映画をサポートする親友・ビート板役。天文部でSF好き、誰よりも賢く、周りを見ているビート板はいち早くハダシの恋心に気づきながら、自分の感情には無関心。そんな彼女が自らの失恋にふと気づいてしまう、ほろ苦いエピソードは数分ながら心、揺さぶられる。3人の仲良さがスクリーンから溢れ出んばかりで、愛らしい。メガネ女子で青春を謳歌する河合はレア。

『由宇子の天秤』(2021)

いじめ自殺事件の真相を追うドキュメンタリーディレクターの由宇子が自身の父のスキャンダルを目の当たりにし、隠蔽しようとする。河合は貧困のために塾の月謝が払えず、経営者である由宇子の父と関係を結んだ挙句、望まぬ妊娠をしてしまう女子高生、萌役。保身のために彼女を監視しようと近づく由宇子(滝内久美)の思惑を知らず、無防備に信頼した結果、突き通される萌の悲劇から目が離せない。大人でも子どもでもない彼女の儚さ、危うさ。ベルリン国際映画祭パノラマ部門に出品され、本作と『サマーフィルムにのって』の演技が認められ、河合は多くの新人賞を受賞した。

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