中国3隻目の空母「福建」が初の試験航海に出発 中国メディアが報道

By Kosuke Takahashi

初の試験航海に出発した中国空母3隻目の福建(中国政府系英字紙のチャイナ・デイリー)

中国国営新華社通信は5月1日、中国空母3隻目の「福建」が初の試験航海に出発したと報じた。海洋進出が著しい中国海軍の軍備増強に向けた新たな一歩となる。

新華社通信によると、福建は同日午前8時ごろ、上海江南造船所を出港した。試験航海では主に空母の推進システムと電気システムの信頼性と安定性をテストするという。ただし、試験航海の日程や予定場所などの詳細は明らかにしなかった。

しかし、試験航海に先立ち、上海海事局は1〜9日に上海から東に約100キロ以上の沖合の海域に軍事演習のための航行禁止区域を設けた。

新華社通信は、福建が2022年6月の進水以来、係留試験、艤装工事、機器調整を完了し、海上試験の技術要件を満たしたと報じた。

一方、中国政府系英字紙のチャイナ・デイリーは1日付の記事で、福建について「完成すると、この巨大な船は8万トン以上の水を排水することになる。これはアジア諸国がこれまで建造した中で最大かつ最強の軍艦であり、米国以外では世界最大の空母となる」と誇示した。

中国1隻目の空母「遼寧」(満載排水量5万8500トン)と2隻目の「山東」(同7万トン)に対し、福建の満載排水量は8万トンを超えて中国最大の軍艦となる。海上自衛隊最大のいずも型護衛艦の満載排水量は2万6000トンであり、福建の大きさがうかがえる。

旧日本海軍最大の空母「信濃」(満載排水量7万1890トン)がこれまで通常動力空母としては世界最大の記録を誇ってきた。大和型戦艦3番艦の信濃は太平洋戦争中の1942年6月のミッドウェー海戦で日本が主力空母4隻を一挙に失ったため、空母に改装されて完成した。

上海で係留試験中の中国空母「福建」(写真:中国CCTVのスクリーンショット)

遼寧と山東の両空母は、電磁式カタパルトシステムではない従来型の推進システムを備え、艦載戦闘機の発進にはスキージャンプ方式を採用している。

2023年版防衛白書によると、福建はJ-15戦闘機やKJ-600早期警戒機など60~70機を艦載できる。これに対し、遼寧と山東の各搭載機数は約40機に制限されている。

福建は2023年中に最初の試験航海が実施される可能性が取り沙汰されてきたが、結局、先送りとなっていた。その理由について、中国の軍事専門家の傅千紹氏は今年1月3日、中国共産党系国際ニュース「グローバルタイムズ」(環球時報)の取材に対し、「福建には多くの新技術、特に電磁式カタパルトシステムが装備されているため、人民解放軍海軍のこれまでの2隻の空母の遼寧と山東よりもテストに時間がかかるのは当然のことだ」と解説していた。

チャイナ・デイリーによると、就役前に遼寧は10回、山東は9回の海上試験をそれぞれ実施したという。

台湾国防部(国防省)は、福建が2025年に就役すると予測する。

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