青森県十和田市の元町西地域で今年2月、住民グループが協力して管理している「地域猫」が、鳥獣保護法で原則使用禁止のトラバサミに挟まれ大けがをし、十和田署が動物虐待事件の可能性があるとみて捜査していることが4月30日までに分かった。その後も猫の負傷が相次ぎ、住民らは「こんなことをする人が近所にいるかもしれないなんて」と憤りや不安を口にしている。
地域猫は、特定の飼い主はいないが住民有志が特定のごはん場の設置などを行うほか、不妊・去勢手術も施している。雄は右耳、雌は左耳の先端をカットし、耳の形状から「さくら猫」とも呼ばれる。
「餌やりの仕方などに気を付けているが、それでも『猫が嫌い』『猫は迷惑』という人もいると思う。でも、だからといって虐待して良いという話にはならない」。負傷した猫を見つけた50代女性は語気を強める。女性は現在、8匹の地域猫の面倒をみている。
女性によると、2月23日、左前足をトラバサミに挟まれた1歳の雌猫が、トラバサミを引きずりながら女性宅に姿を現した。骨が見えるほどのけがをし、動物病院に連れて行ったが、左前足の切断を余儀なくされたという。
トラバサミは全長約24センチ。獲物の足を挟む半円の金属板には、くぎが仕込まれ、獲物に突き刺さるようになっていた。十和田署は女性からの通報を受け、動物愛護法と鳥獣保護法違反の疑いがあるとみて捜査している。
その後も3月に後ろ右足に貫通寸前の傷を負った雄猫、4月に尻尾の付け根にけがをした雌猫を発見。女性は「どの傷も最初の猫の傷に似ていて、事故や猫同士のけんかでつくようなものではない」と話す。
グループのメンバーで、3匹を保護している男性(41)は「猫の行動範囲を考えると、トラバサミは女性宅の周辺、住宅街に仕掛けられていたのでは」と推測。グループの他のメンバーたちによると、今年から姿を見なくなった地域猫も2匹ほどいるという。
現場は小学校や保育園などもある住宅地。メンバーらは「猫への被害も心配だけど、人間の子どもがトラバサミにかからないかも心配」と不安を隠せずにいる。